モノづくり素人がデザインしたものを“カタチ”にする——。そう聞くと、いろいろな部分が破綻してしまった落書きのようなイラストを無理やり立体化する……、以前はそんな印象がありました。
しかし、ソフトウェア/ハードウェアともに、「デジタルファブリケーション」のためのさまざまなツールが登場している現在においては、素人のデザインであっても“ちゃんとしたモノ”として作り上げることが可能です。さて、モノづくり素人であるアイティメディア「3Dモデラボ」のdyamaokaさん、うでみさん、やぎさわさん。そして、Mozilla Japanの赤塚大典さんのプロダクトはどんなカタチになったのでしょうか!?
前回は、自分の価値観を掘り下げ、自分を含む1000人の人が喜ぶプロダクトを企画し、必要な機能に沿ってカタチを決めました。このカタチは、あくまでもプロダクトのイメージをつかむための原形です。ここからどのようなカタチになっていくかは、プロダクトの使用条件や生産方法によっていかようにでも変わってきます。
プロダクトの使用シーンを抽出する「SMASH」
今回は、デザインの検討を行っていきます。ハサミ1つとっても、子ども用や大人用、右利き用や左利き用、枝切りバサミなど、対象や用途によって大きさや構造が異なります。子ども用ならば小さくて軽く、刃先は丸く安全な形状になっていますし、枝切りバサミであれば、力のいる作業をしやすくするために手のひら全体を使って柄を握れる構造になっています。つまり、目的に沿った体験を得られる道具として、シーンによって大きさや構造が決まるということです。
「ハサミを使いたい」のではなく、「工作のために安全に色紙を切りたい」「庭木のせんていをしたい」という“目的”を見つけ出します。こうした目的が生まれる使用シーンを考えることが、「Product for 1000」の“キモ”といえます。
Product for 1000では使用シーンの抽出方法として、「SMASH」というワークフローを用います(画像3)。
- Situation=状況
- Motivation=動機
- Age=年齢
- Spot=場所
- How=方法
例えば、
(S)秋の夜長に、(M)読書をしたい、(A)20代女子が、(S)自宅でお風呂に入りながら、(H)本をぬらさずにフリーハンドでページを固定する道具である。
といった具合に使用シーンを抽出していきます。
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