T-KernelやITRONなどの仕様策定などを行うT-Engineフォーラムは「2014 TRON Symposium(TRONSHOW)」(東京ミッドタウン 2014年12月10〜12日)を開催した。1984年のTRONプロジェクト誕生から30周年となる2014年のTRONSHOWは、プロジェクトの“歩み”と“最前線”が紹介されていた。
TRONプロジェクトの概要とその歴史はT-Engineフォーラムの30周年記念サイトに掲載されているので割愛するが、これまでの取り組みの結果、プロジェクトは組み込み機器向けリアルタイムOSの「ITRON」「T-Kernel」などを生み出し、非常に多くの製品に採用されている。
会場入り口にはプロジェクトの成果である、TRON採用製品を紹介するコーナーが設けられており、デジタルカメラ(ニコンのデジタル一眼レフカメラ「D750」とミラーレスカメラ「Nikon 1 V3」、カシオ計算機の「EXILIM EX-F1」)からプロジェクター(リコー「PJ WX4141」)、複合機(エプソン「EP-805AW」)、電子ピアノ(ヤマハDisklavier C6 E3PRO」)などが展示されていた。
その他にもパネルのみだったが、小惑星探査機「はやぶさ2」やトヨタ自動車「クラウン」、富士通の全周囲立体モニターシステム「OMNIVIEW」、コニカミノルタのX線装置「Aero DR」などにもTRONが採用されていることが紹介されていた。製品に使用されている組み込みOSの種類は公開されない事が多いので、なかなか興味深い展示といえる。
プロジェクトの“最前線”として、今回のTRONSHOWに展示されていた新製品を紹介しよう。
ユーシーテクノロジの「UCT IoT クラウドサービス」は、同社の環境自動計測システム「つぶやく環境センサー」や6LoWPANのワイヤレスノードにも対応したIoTクラウドサービス。データ蓄積からグラフ化、メール/SNS通知などがパッケージされており、月額3000円からの価格で提供する。
「UCT 6LoWPAN開発キット」は、IEEE 802.15.4および6LoWPANに基づくIoTアプリケーション開発キット。エッジデバイスになる無線モジュールのOSにはμT-Kernel 2.0が採用されている。μT-Kernel 2.0の採用について同社では、マイクロ秒単位での時間制御機能(周期ハンドラやアラームハンドラ、タイムアウトなど)を挙げる。
キットには6LoWPANボーダルータ、無線モジュール(4基)のほか、μT-Kernel 2.0やデバイスドライバ、6LoWPANプロトコルスタックなどの開発環境、6LoWPANパケットスニッファなどが含まれる。
パーソナルメディアの「超漢字検索 Web版」は同社の提供しているPC用漢字検索入力ツール「超漢字検索」のWebサーバ版。最近ではWebアプリとして提供されることの多い名簿管理や電子自治体システムにおいて、本ソフトを導入することで読みにくい漢字や異体字を素早く、正確に入力することが可能となる。
Unicodeで異体字をコード化して扱う規格「Unicode IVS/IVD」や、情報処理推進機構(IPA)が整備した「IPAmj明朝フォント」に対応しており、約18万字(同一字形の重複を除くと約10万字)を扱える。自治体や法人に向けてのカスタム販売を予定しており、発売は2015年夏を予定している。
同じくパーソナルメディアの「OpenCV for PMC T-Kernel」は画像処理ミドルウェア「OpenCV」を、x86アーキテクチャで動作する産業用PC向けRTOS「PMC T-Kernel 2/x86」に移植したもの。T-Kernel向けに書かれたデバイスドライバが利用できるため、システム実装の短縮が期待できるという。
機能としてはオブジェクトやエッジ、特徴点検出といった画像認識や色変換などの画像変換の他、カメラからの画像取り込み、画面上への画像出力、画像ファイル入出力などを備える。
関連記事
- TRON Symposium:TRONプロジェクト30周年、「TRON Symposium」開催概要が発表
T-Engineフォーラムは2014年12月10〜12日に開催する「2014 TRON Symposium」の概要を発表した。TRONプロジェクトが30周年を迎えることを記念してのコーナーも用意される。 - TRONSHOW2014:ハチの背中に超小型RFIDチップ——生物多様性保全のためのユビキタス
日本大学 生物資源科学部 内ヶ崎研究室は「TRONSHOW2014」において、「生物多様性保全のためのユビキタス」に関する研究成果を披露。西洋ミツバチとクロマルハナバチの背中に、小型RFIDチップを取り付け、RFIDリーダーが設置された通路を通過したハチの個体番号と巣の出入り時間を記録するシステムのデモを実演した。 - TRONSHOW2013:道路構造物の老朽化対策の決め手となるか!? トンネルや橋の異常を早期発見するモニタリングシステム
ネクスコ東日本エンジニアリングは、「TRONSHOW2013」の「ユビキタス・コンピューティング展」において、各種センサーや送受信装置、RFID技術などを活用した「道路施設モニタリングシステム」に関する展示を披露した。 - TRONSHOW2013:ソーラー発電に衛星通信! 災害時に役立つ情報端末「街角情報ステーション」
2012年12月12〜14日に開催された「TRONSHOW2013」の「ユビキタス・コンピューティング展」において、ユーシーテクノロジは災害時に役立つ「街角情報ステーション」の展示デモを披露した。
関連リンク
Copyright© 2014 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.