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NTTコムとニフティも参入――音声通話サービスを提供するMVNOが増えてきた理由

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 師走に突入し、モバイル業界の動きもあわただしくなってきた。この2週間は、特にMVNOの大型発表が相次いだ。11月26日には、ISPのニフティがドコモから回線を借りた音声サービスの「NifMo」を発表。12月1日には、NTTコミュニケーションズが「OCN モバイル ONE」で、音声サービスを開始した。ゲオと提携し、SIMカードの即日発行も行う。MVNOの中では特にシェアが高い同社だけに、業界に与える影響は大きそうだ。

 ほかにも、CCCが「CCCモバイル」を設立したり、フュージョン・コミュニケーションズが楽天モバイルのセット端末「Ascend Mate7」「AQUOS SH-M01」を発表したりと、この2週間はMVNOの動きが活発だった。今回の連載では、新たに音声サービスを開始するNTTコムとニフティの狙いを解説していく。料金はいずれも税別。

ワイモバイルにも対抗、音声通話サービスに踏み出したNTTコミュニケーションズ

 NTTコミュニケーションズは、「OCN モバイル ONE」に音声通話対応のサービスを追加した。その料金プランは下記表のとおり。データ通信専用のプランと使えるデータ量や1日、1カ月といった単位は同じで、各プランで料金が700円高くなっている。つまり、この700円が携帯電話の料金プランで一般的な「基本使用料」にあたるものだと考えられる。通話料は、どのプランでも30秒20円。回線交換の場合、設備をドコモなどのMNOからそのまま借りている場合が多く、OCN モバイル ONEもこの点は変わらない。

photo音声通話対応のSIMカードは、パッケージも一新。赤を基調としている
「OCN モバイル ONE」音声SIMの利用料金(税別)
70MB/日100MB/日2GB/月4GB/月500kbps(7GB/月)
月額料金1600円2080円1800円2150円2500円
音声通話料20円/30秒
オプション迷惑電話ストップ:無料 転送電話:無料 キャッチホン:200円 留守番電話:300円
容量シェアSIM1150円/1枚

 特徴的なのが、データ通信量のシェアに対応していること。もともと、データ通信専用のプランで利用できた仕組みだが、これを音声通話にも対応させる。追加で発行できるSIMカードは最大4枚。1枚ごとに1150円の料金がかかる。つまり、1150円で音声通話に対応した回線を1回線増やせるということだ。データ通信のみの場合は450円で1枚のSIMカードを追加できたが、ここに音声通話の基本使用料が合算されたと考えれば分かりやすい。この「容量シェアSIM」は、どのコースにもひも付けられる。例えば、あまりデータを使わない家族なら、4人で「100MB/日」コースに入って、1人平均25Mバイトずつ使うといったことも可能だ。

 通話料は30秒20円とやや高めの設定だが、発信は通話料の安いIP電話で行いつつ、今まで使っていた電話番号で着信する。こんな利用も可能になる。そのため、同社は音声通話対応SIMにIP電話サービスの「050 plus」をセットにした。「もともとは300円、データ通信対応のOCN モバイル ONEでは150円を基本料金にしていたが、音声通話対応SIMだと無料になる」(ネットワークサービス部 販売推進部門 担当課長 新村道哉氏)ように料金を設定。番号は050になるが、対固定電話で3分8円、対携帯電話で1分16円で電話をかけることができる。

「050 plus」の利用料金(税別)
050 plus単体データSIMとのセット音声SIMとのセット
基本使用料300円150円0円
対携帯電話宛16円/1分
対固定電話宛8円/3分
対050 plusなど無料

 NTTコミュニケーションズは、MVNOの中でトップシェアを誇る事業者だ。6月にMM総研が発表したデータによると、41万回線でシェアは23.7%。「他社が音声通話対応のSIMカードを出していた中で、販売が下がっていたわけではない」(新村氏)そうで、データ通信対応SIMカードのみで販売数を順調に伸ばしていた。「10月(の契約者数)は、過去最大だった」とのことで、「格安SIM」「格安スマホ」のブームを追い風に、規模を拡大している。

photophotoネットワークサービス部 販売推進部門 担当課長 新村道哉氏(写真=左)。6月にMM総研が発表した独立系MVNOのシェア。NTTコミュニケーションズはシェア1位となる(写真=右)

 一方で、MVNOのサービス全体を見渡すと、音声通話のSIMカードも徐々に増えている。IIJ、BIGLOBE、日本通信、U-NEXTなど、シェアの高いMVNOは軒並み音声通話に対応済み。楽天モバイルとNifMoに関しても、音声通話に対応している。MVNOが音声通話に対応する理由はいくつかある。その1つが、ユーザーからのニーズがあるということ。IP電話よりも安定度の高い回線交換を利用できるのは、大きなメリットだ。いざという時に、110や119などの緊急通話ができる安心感もある。また、新村氏が「スマートフォンといえば、やはり090や080の番号を利用できるのがみなさんのイメージ」と述べているように、電話に対応することで、一般ユーザーの心理的な障壁を下げる効果もある。

 もう1つの大きな理由が、今まで利用してきた電話番号をMNPでMVNOに移せるということ。もともとはサブ端末のデータ通信回線として契約者を伸ばしてきたMVNOだが、MNPができればメイン端末の音声通話需要まで取り込めるようになる。2台目需要から、1台目需要に、ニーズが移り変わってきたといえるかもしれない。実際、音声通話対応SIMを始めたMVNOの契約者数も順調に伸びており、関係者に話を聞くとMNPの利用者が高い割合を占めているという。このニーズを取り込むために、OCN モバイル ONEも満を持して音声通話に対応したというわけだ。

 とはいえ、キャリアショップのような店舗がないMVNOだと、音声通話対応のSIMカードは発行までに時間がかかる。本人確認が厳格で、店舗やシステムがそろっていないと、郵送対応になるからだ。最近ではIIJがビックカメラ内にカウンターを設置、即日対応を始めている。U-NEXTも同社の運営する店舗で、新規契約やMNPが可能だ。これに対し、NTTコミュニケーションズはゲオと協力。「ゲオアキバ店」で、新規契約の即日開通手続きを開始する。MNPには未対応だが、準備は進めているといい、こうした店舗は「どんどん増やしていきたい」(新村氏)という。

 以前はデータ通信のみを提供して回線提供元のキャリア(MNO)とすみ分けを図っていたOCN モバイル ONEだが、音声通話対応サービスの開始に伴い、その位置づけが徐々に変化している。同じNTTグループのドコモとのすみ分けも意識した。競合となるのが、ソフトバンクグループの中でアグレッシブな料金プランを打ち出す、ワイモバイルだ。

 「ドコモにも、ワイモバイル対抗をやり切れていないという意識がある。お互い協力して、その部分を弊社が担っていくという話はさせていただいている」(新村氏)

 欧米ではグループ企業のMVNOをサブブランドとして位置づけるキャリアもいるが、ドコモとNTTコミュニケーションズのOCN モバイル ONEも、それに近い関係になりつつあることがうかがえる。

 また、NTTコミュニケーションズでは、音声通話対応SIMカードを「光コラボレーションメニューと合わせて、トータルでOCNをご利用いただける環境を整える第一歩」(新村氏)と位置付けている。ドコモが「ドコモ光」を開始し、ワンストップで固定からモバイルまでを提供しようとしているが、MVNOの仕組みを使えば、ISPにも同様のことができる。NTTコミュニケーションズでも、OCNとOCN モバイル ONEをセットで契約すると200円の割引を受けられる。このように、今後は固定も含めた総合力での競争に軸足が移っていくのかもしれない。

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