今年発売された4K対応テレビの中で、ひときわ異彩を放っているのが三菱電機の「LS1シリーズ」だ。ソニー「X9500B」、東芝「Z10X」、パナソニック「AX900」など完成度の高い高画質をアピールする製品は幾多もあるが、この三菱の「LS1シリーズ」ほど今年筆者に鮮烈な印象を残した4K対応テレビは他にない。その理由はいくつかあるが、なんといっても本格的なサイド・スピーカーが奏でる、その音のすばらしさを第一に挙げたい。
「テレビでしょ? 音のよさがそんなに重要なの?」という声が聞こえてきそうだが、本機で音楽ライブBlu-ray Discをいくつか観て、ほんとうに驚き、感動した。歌声を美しく艶やかに描き、オーケストラの伴奏がなめらかに自然に広がり、画面に映し出されたシンガーが、まさに眼前でぼくのためだけに歌ってくれているような、そんなイリュージョンが味わえたのである。家庭用テレビを30年間ウォッチし続けてきたけれど、こんな経験は初めてだ。
今世紀に入って本格化した薄型大画面テレビ時代は、高画質化が着実に進むのに合わせるように音質が劣化していった時代だったとも言える。約10年前、ベゼル(フレーム)幅を極限まで細くしたスタイリッシュな液晶テレビを韓国サムスンが提案、北米などでバカ受けしたのを見て日本メーカーが追従したことが決定的だった。
狭ベゼル化したことでスピーカーの設置場所に困り、画面下部に非力なドライバーを無理やり下向き配置するしかなく、音圧が十分に取れない、音量を上げると歪む、声がよく聞き取れない、声が下から聞こえてきて映像と合致しない違和感がある……など数々の問題点が顕在化したのにも関わらず(ぼくもずいぶん警告を発したけれど)、どのテレビメーカーも反省の色を見せなかった。
そんなわけで、テレビの下に設置するサウンドバー・タイプや台座型スピーカーなどが数多く登場し、テレビの音のひどさに辟易していたユーザーが飛びついたわけだが、これはぼくには最悪の展開としか思えなかった。なぜならそういう類の製品を導入しても「声が下から聞こえてきて映像と合致しない違和感がある」問題点はいっこうに解決しないからだ。
まずこの問題に対処したのはソニーだった。2012年発売の同社初の4K対応テレビ「KD-84X9000」で大画面の左右に別筐体のスピーカーを配置、本格的なステレオサウンドを聴かせ、ぼくを驚かせた。昨年にはそのコンセプトを継承した「X9200A」が登場してヒットを飛ばし、今春の「X9200B」でいっそうその音質に磨きをかけている。
65型の「LCD-65LS1」、58型の「LCD-58LS1」の2モデル展開となる三菱「LS1シリーズ」は、そのソニーX9200Bをはるかに上回る超本格的なステレオサウンドでぼくは魅了したのである。
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