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乗り物文化の重鎮を追悼 種村直樹さん、徳大寺有恒さん

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杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

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1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP


 本来、追悼記事は故人一人を掲題とすべきだし、そうでなければ失礼だと思う。しかし、2日連続で訃報に触れ、そこで初めて、種村直樹さんと徳大寺有恒さんが同世代であり、それぞれの分野で同じ時代に乗り物というものを趣味から文化へ高めていたと気付いた。2人は私たち鉄道ファンや自動車ファンに多くのものを与えてくれた。

 私にとっては、乗り物について書く姿勢について学ぶべきところがあった。私がお2人から学んだことは、私の中で1つになり、新たな思いへ進化する。きっと同じようにお考えの方もおられることだろう。本稿は追悼を兼ねつつ、稚拙ながら「先達に学び、それを生かす」という主題で語りたい。どうかご無礼をお許しいただきたい。

『鉄道旅行術』と『間違いだらけのクルマ選び』

 種村さんは毎日新聞の記者からフリーライターに転じ、自らレイルウェイ・ライターと称して活躍した。乗り鉄のバイブルとして今も語り継がれる「鉄道旅行術」の初版刊行は1977年だ。徳大寺さんは、レーシングドライバーから実業家を経てフリーライターとなった。自動車好きなら誰もが知っている名著「間違いだらけのクルマ選び 良いクルマを買うための57章+全車種徹底批評」の出版は1976年だった。

 この時代は鉄道も自動車も男性の趣味であった。男の子がブリキのおもちゃを卒業し、やがて書物から鉄道やクルマの知識を得ようと書店や図書館に向かう。それは恐らく中学生から高校生くらいだろう。1970年代後半、2つのベストセラーが誕生した時期の少年たちは、今、私と同じ40代かそれ以上のはずだ。

 2人の健筆な期間は長かったから、30代、もしかしたら20代後半から上の世代なら、種村さん、徳大寺さんをご存じだと思う。そして、お2人の功績がなければ、現在のように、鉄道の旅は社会に認知されなかったし、クルマで文化論を語れなかったかもしれない。これも多くの方に共感いただけると思う。

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