慶應義塾大学SFC研究所データビジネス創造・ラボは11月8日、第2回目となる「データビジネス創造コンテスト」を開催した。「Digital Innovators Grand Prix(DIG) 2014」という愛称にも込められたように、デジタルネイティブ世代の高校生や大学生が、データを広く深く「DIG」(掘る)して、新たな知の抽出や価値の創出を競うコンテストだ。
アクセンチュアが協力した今年のテーマは、「デジタルネイティブ世代による自治体政策の変革」。さまざまなオープンデータを活用し、神奈川県、佐賀県、会津若松市(福島県)、流山市(千葉市)、鯖江市(福井県)という5つの自治体の課題を浮き彫りにし、その解決策を競った。単なるアイデアにとどまらず、実現性の高い具体的な政策の提案を引き出すのが狙いだ。
アクセンチュアでアナリティクス部門を統括する工藤卓哉マネジングディレクターは、「過去のデータを、今の若い世代が活用し、未来の人たちのための新たな価値を生み出す、意義ある機会だ」と話す。
慶應義塾大学三田キャンパスのホールでは、予選を勝ち抜いた10チームがプレゼンテーションを行い、慶應義塾大学環境情報学部長の村井純教授や工藤氏らが「社会貢献」「斬新さ」「オープンデータの活用度」「利用データの多様性」「実現性」の5項目で審査した。
この日、最優秀賞に輝いたのは、佐賀大学大学院のTeam Saggestによる「オープンデータの分析による救急搬送プロセスの向上」。
救急搬送は1分1秒が救命にとって重要だが、佐賀県ではその平均時間が年を追うごとに長くなっているという。2011年には県内全ての救急車にiPadを導入して搬送スピードを向上させたものの、近年では再び長時間化に悩まされているという(関連記事:救急搬送をiPadで見える化した佐賀県、自称・ITオンチの新任職員はどう挑んだのか?)。
そこでTeam Saggestでは、救急搬送のプロセスを「通報」を境に2つに分け、オープンデータを分析し、それぞれの課題を解決し、平均時間を短くする以下のような具体的な施策やスマートフォンアプリ開発の提案につなげた。
- 耳の遠い高齢者が救急搬送の依頼を迅速かつ的確に行えるアプリの開発
- 救急搬送が必要かどうかの相談窓口「救急相談センター」の立ち上げとすぐに窓口につながるアプリの開発
- 服薬の状況を救急隊員のiPadと共有できるお薬手帳アプリの開発
そのほかの各賞は以下のとおり。
優秀賞
チーム新領域(東京大学大学院)
「空き家」と「学生空き家利活用」のマッチングによる将来の若者拠点形成
審査員特別賞
東大経済研統計コース(東京大学大学院)
緊急搬送における時間短縮に向けた救急車等の効率配置
高校生部門賞
M&A(私立東海高等学校ほか)
流山市 若年層投票率向上大作戦!!
未来創造賞
実践人社(実践女子大学)
SNSからみる女性が求める「真」のポジティブ・アクションの把握と導入
アクセンチュア賞
ZOKEI AWP(東京造形大学大学院)
会津若松の魅力は若者に伝わるか?
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