マルチプラットフォーム化が加速するMicrosoft Office
米Microsoftは11月6日(現地時間)、Androidタブレット向けOfficeのプレビュー版を近くリリースすると、同社Webページ内のブログで発表した。同日より申し込みを受け付けており、製品版の提供は2015年初期の予定だ。
同時に他プラットフォーム向けのOfficeも更新している。例えばiOS版はiPhone用UI(ユーザーインタフェース)、iPad用UIともに改良が加えられており、先日発表されたDropboxとの提携に合わせ、OneDriveとともにクラウド連携機能を備えたOfficeアプリに進化している。こちらはすでにリリース済みだ。
いずれも無料で利用でき、Office 365のサブスクリプションなしに文書の作成や編集も行える。
タイミングを見計らっていたわけではないだろうが、AppleはiOSのIME機能を今年リリースのiOS 8からサードパーティに解放しており、例えば日本市場ではATOKなどのPCと同等の入力環境を得られるようになっている。同時にタブレットに使われるプロセッサの能力もPCレベルに近付き、電力効率では肩を並べそうなところまでやってきた。
まだ絶対的なパフォーマンスではPCが上回るものの、オフィスワークに限って言えば、MicrosoftがOfficeをマルチプラットフォーム展開することで、タブレットの適応領域が広がってきている。あるいはこの動き(IMEのサードパーティ解放も含む)によって、欧米に比べて普及が遅れていたタブレットのビジネスパースンへの導入が、日本でも進むのではないだろうか。
さらに同ブログでは、次期OSであるWindows 10向けのバージョンについても言及している。当然と言えば当然だろうが、タッチUIとデスクトップUIの両方を融合するWindows 10のコンセプトに合わせた、新バージョンを準備中とのアナウンスを出したのである(詳細情報は後日提供とのこと)。
Microsoftの積極的な姿勢は、何も今回の発表だけにとどまるものではない。自分たち自身で、自分たちのビジネスの形を変えようとしている。
Microsoftは先日、Dropboxとの提携発表前にも、Mac OS X版のOffice最新版を来年リリースするとアナウンスし、同日、Office 365ユーザー向けにOutlookの新バージョンを無償公開した。筆者も使ってみたが、デザイン、パフォーマンス、機能ともに改善されており、Windows版からの違いをあまり意識しないレベルにまで仕上がっていた。Outlook以外のアプリケーションも、来年に最新版のOffice for Macとしてリリースされることが決まっている。
このようにMicrosoftは、Office事業をWindowsという枠から解放し始めたと言えるだろう。
90年代、Microsoftは独占禁止法で縛られ、会社分割直前の状況だったことがある。しかしその後、米政府が共和党政権になると締め付けは緩み、主力製品であるWindowsを基礎に企業向け、個人向けソリューションを密に統合する方向に経営の舵を切った。ビジネスとしては成功したが、その結果としてOffice製品はWindows依存、プラットフォーム依存の傾向が強くなった。
こうした「内に閉じた」Microsoftの姿勢はオープンになってきていたが、新CEOのサティア・ナデラ氏の時代になってからは一気に解放し、何らかの枠にとどまらないビジネス展開を目指しているように見える。しかも品質は良好で、プラットフォームが違ってもユーザー体験のレベルは変わらないところまで開発は進んでいる。
これはユーザーにとって歓迎すべき点である以上に、Microsoftにとって前に進む準備ができたことを示しているのかもしれない。
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