教育格差は今や、世界的に大きな問題となっている。特に人口が爆発的に増えているインドでは、子供の数に対する教師の数不足が深刻で、農村地帯の教育に影響が出始めている。
インドの学校は80%が地方の農村部にあり、貧しさゆえに教育のために必要な機材をそろえるのが難しいという。また、学校に行ったことがなく、子供に勉強を教えられない親が多いこともあり、都市部との教育格差がより深刻化している。
この問題の解決に乗り出したのが、インドのEdutel Technologies(以下、edutel)だ。いったいどんな方法で教育格差をなくそうとしているのだろうか。
授業を衛星中継でライブ配信、質問はタブレットで
その農村地帯の学校は、英語と数学の授業の時には教壇に教師が見当たらない。代わりにあるのはPCとプロジェクターだ。そう、この学校の生徒はプロジェクターの大画面に映る先生の「ライブ授業」で学習しているのだ。
先生は都市部にあるスタジオで授業を行い、それをedutelが衛星放送で配信。学校側はedutelが用意したPCと衛星放送用機材、プロジェクターを使って受信する。停電が多い農村部で授業が途絶えることがないよう、太陽光発電装置も貸し出すという徹底ぶりだ。
ライブ授業とはいえ、先生からの一方通行ではないところもポイントだ。授業の中で分からないところあると、生徒はアプリの入ったAndroidタブレットを使って質問することができる。このとき、質問に答えてくれるのは、ライブ授業を行っている先生ではなく、学校ごとに割り当てられた授業の進行役のモデレーターだ。
ライブ授業を行っている先生は、1000の学校の30万人の生徒を相手にしているため、いっぺんにたくさんの質問が寄せられたら答えきれない。代わりにモデレーターが対応するというわけだ。1人のモデレーターは12の学校を担当しており、学校にいることもあれば、遠隔地から参加することもある。この“どこからでも参加できる”仕組みが、教師不足の解消につながっている。
生徒たちにとって、大画面で授業を繰り広げる先生は、テレビの中のスターのような存在。子供たちには年に1度、先生と実際に会う機会が与えられ、その場は大いに盛り上がるという。
課題は“安価で高性能なPC”の調達
教室という箱さえあれば、どこでも質の高い授業を提供できる——。これがedutelの教育システムの強みだが、同社CEOのハーシャ・マハバラ氏は「このライブ授業を展開するには、システムの可用性の高さが重要」と話す。システムの故障や障害が起これば、生徒の授業の時間が失われてしまうからだ。
そこでポイントになるのが学校に配っているPCの安定性だ。バックアップ用のPCを併せて用意できれば問題ないが、予算が限られていたため、1つのシステムで堅牢性が高いものを入れる必要があったという。
そこで、これまで自分たちでコンポーネントを調達して組み上げていたPCから、DellのPCへのリプレースを決めた。今ではCeleron Dual-CoreのCPUを搭載したPCにNVIDIAのグラフィックカードを入れ、Ubuntu OSをインストールして学校に配っている。
DellのPCを採用した理由はいくつかあるとマハバラ氏。1つは古いCPUのマシンに新しいグラフィックカードを入れるというカスタマイズが可能だったためだ。
学校の教育用に使うため、edutelではグラフィック性能の高いマシンを導入したいと考えていた。しかし、グラフィックスカードを搭載したシステムはi3、i5コアのものになってしまい、PC1台あたりのコストが200ドルほど上乗せされてしまう。これがDellのカスタマイズのおかげでコストダウンできたという。「古いCPUに新しいマザーボードを入れるというカスタマイズをやっているところがDellのほかにはなかった」(マハバラ氏)。デルのPCを導入した後の障害発生率は導入前に比べて2分の1になり、授業の損失時間も半分に減っている。
もう1つはサポート体制だ。現在、edutelでは1000の学校で授業のライブ配信を提供しているが、今後、4万5000の学校に広げていこうと計画している。この規模のサポートに対応できる企業を選んだという。
現在は農村部の教育に力を入れているedutelだが、今後は貧困のために教育を受けられない都市部の子供たちにも学習の機会を提供する計画だ。
なお、マハバラ氏は、すでに安価に調達できる「Chromebook」を使ったプロジェクトも検討中だと話しており、今後の展開にも注目だ。
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