杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP。
日曜日の午前中に東京から伊豆急下田行きの特急「踊り子」に乗った。東京駅で半分くらいの席が埋まり、横浜駅で満席となって、自由席車両は通路に立ち客もいた。最初は「やっぱり伊豆って人気があるんだなあ」と思っていた。しかし、小田原でかなりの乗客が降りて空席ができ、熱海でもごっそり降りてしまった。かくいう私も目的地は岳南鉄道の起点の吉原駅だったから、そのまま東海道本線を乗り継いだ。「踊り子」から東海道本線を乗り継ぐ客は私だけかと思ったら、意外にも伊豆に行かないお客さんが多かった。(関連記事:竹取伝説と富士山とつけナポリタン——岳南鉄道)
新幹線と在来線の選択肢
新幹線はJR東海が運営している。東海道本線はJR東日本が運営している。だから東京〜熱海間は両社が競争関係にあると言えそうだ。到達時間の早さはもちろん新幹線「こだま」だ。東京〜熱海間は40〜50分である。「踊り子」は約80分と2倍近くかかる。一方で、運賃+特急料金は在来線が安くて有利……と思ったら、通常期の指定席で比較すると、新幹線が4190円で、「踊り子」は3800円と、400円程度の差しかない。
もっとも、小田原や熱海なら各駅停車で行く人もいるだろう。東海道本線の普通列車なら1940円で済む。ただし、所要時間は約2時間だから「踊り子」を選ぶという考え方も理解できる。東京〜小田原間なら快速「アクティー」もあるから、なおさら在来線に軍配が上がりそうだ。
「踊り子」は、伊豆へ向かう観光列車としての役割だけではなく、東京・横浜と小田原・熱海間を結ぶ役割も大きいようだ。先ほど述べたように、この区間は新幹線があるわけだが、並行する在来線特急も成立している。これは注目すべき事実である。誰が注目すべきかというと、地方の並行在来線を運行し、支える人々だ。
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