もしあなたが“音ゲーマー”なら、「Deemo」「Cytus」といったスマートフォン向けリズムゲームの名前を1度は聞いたことがある、もしくは既にプレイしていることだろう。いずれも日本やアジア市場のコアな音ゲーマーから高い評価を受けている完成度の高いゲームだ。これらの本格派なゲームを生み出しているのは台湾のRayark。Rayark CEOのユウ・ミンヤン氏に、スマホゲームでアジア市場を勝ち抜くための要因を聞いた。また、今後欧米市場を攻めていく同社の戦略についても尋ねた。
売上の半分は日本人ユーザー
「ゲーム文化はアジアがけん引しており、アジアは西洋よりマーケットが広い。特に日本はRayarkの売上のほぼ半分を占める大きな市場。日本で人気になるゲームはほかのアジア諸国で人気になる可能性が高い」とユウ氏は日本市場の重要性を語った。
モノクロ調のイラストと独特な世界観が特徴のDeemoや、SF的な世界観が魅力のCytusはいずれもGoogle PlayやApp Storeでユーザーから高い評価を得ているが、これらは特に東南アジアで人気があるという。
ユウ氏は日本ユーザーの特性について「日本のゲーム業界は30年前の任天堂に始まり、非常に長い歴史がある。ゲームの質にうるさく、とりわけストーリーが重視される。また、多くのゲームを遊んでいるのでルールが多少複雑でもチュートリアルなしでプレイできる」と語る。他国に比べて日本のユーザーはゲームについて洗練されており、日本のユーザーをいかに満足させるかに重きを置いているということだ。
しかし、スマホ向けゲームはいわゆる“カジュアルゲーム”と呼ばれるライトユーザー層を想定したものが主流で、日本ユーザー向けのしっかりと作り込んだゲームを作っていてビジネス的に成長は見込めるのだろうか。
ユウ氏は「自分の母親や親戚すらもスマホでカジュアルゲームをするようになってきている現状は把握しているが、一方で本格的なゲームの需要もある」と話す。「コンシューマーからPCへハードウェアが移行するスピードより、PCからモバイルへ移行するスピードは早かった。今は20〜30人で開発しているが、今後は100人以上の体制で開発することもあり得る。スマホに触るまでゲームをしたことがなかったという人の期待値も今後高くなっていくと考えており、グラフィックの改善に注力していく」と語った。さらに、「スマホは次々と新しい機能が追加されていく。例えば今なら、位置情報を使った新しい楽しみ方を提案できる。それを誰でも簡単に楽しく遊べるように作ることが重要」だと説いた。
Googleに求めるのは「キャリア決済」への対応
「プラットフォームとしてのGoogleに求めることは何か?」という問いに対して、ユウ氏は「キャリア決済をもっと多くの国で導入してほしい」と答えた。台湾ではギフトカードによるプリペイド課金はできるが、キャリア課金はほとんど普及していない。「ユーザーからもよくギフトカード以外の決済ができないのかと聞かれるので、Googleに聞いてくれと返している」と冗談交じりに語った。ユウ氏はスマホゲームに課金してもらう上で、決済手段を簡単にするキャリア決済は非常に重要であると考えている。今後は無料でダウンロードし、ゲーム内で課金していくフリーミアムモデルのゲームも提供予定で、台湾よりも日本ユーザーの方がより高い金額を課金してくれることを期待しているという。
また、それほど広告にリソースを割くことはないと話すユウ氏は、「ソーシャルメディアの拡散によるプロモーションを最も重視」している。ゲームに対するコメントやスコアの共有による独特のユーザーコミュニティが一番の宣伝になるのだという。
「ゲーム体験をさまざまなデバイスやスクリーンで提供することに注力し、ハードウェアの進化に合わせて開発を進めている」というRayarkが次に狙うのは欧米市場。音楽ゲームではなく、3Dの本格的なアクションRPG「Implosion」で新市場開拓を狙う。ユウ氏は、ImplosionのようなアクションRPGは欧米の文化で受け入れられやすいと考えており、狙う地域によってゲームジャンルを使い分けていることが分かる。「キャラクターデザインやストーリーは文化によって異なるので、そこは地域ごとの特色に合ったものを作り込んでいく」と、あくまでクオリティ重視の姿勢を崩さない方針だ。
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