10月上旬に開催された「CEATEC JAPAN 2014」は、ある意味で国内家電メーカーの現状を示唆していた。4Kテレビが普及期に入ったにもかかわらずテレビを前面に出したブースは減り、ソニーのように出展自体を見合わせたメーカーもあった。AV評論家・麻倉怜士氏はどのように感じたのだろうか?
——前回のテクニクスの時も少し触れましたが、今年のCEATECはどう感じましたか?
麻倉氏:退行傾向とでもいいましょうか、やはりソニーがいなかったのは大きいですね。ソニーは9月にベルリンで開催された「IFA 2014」には非常に積極的で、新型のハイレゾ対応ウォークマンをはじめ、スマートフォンやタブレット、湾曲テレビなど多くの新製品を発表しています。しかしCEATECへの出展を今年から止めてしまいました。
コンシューマー製品に限れば、CEATECは“国内向けの新製品披露会”という意味合いが強くなっています。ですから、ソニーのように世界戦略を展開するメーカーにとってはあまり意味がないということでしょう。まあ、ソニーにお金がないという事情もあると思いますが、同社は以前からCEATECからの“逃げの姿勢”を明確にしていて、今回ついにそれが実現してしまったということです。しかし、国内市場を見ると、やはりソニーに期待している人は多いですから、これは少し考えモノですね。
逆に不思議なのは、日本市場でがんばっているはずの韓国LGエレクトロニクスなどが出展していないことです。例えばLGはラスベガスで1月に開催される「International CES」には毎回大きなブースを構えます。日本でもテレビやスマートフォンをしっかり販売しているのですから出てきてもいいはずですよね。同じくスマートフォンを販売しているサムスンも同じです。日本市場で存在感を示す必要はあるのではないでしょうか?
——注目の展示はありましたでしょうか
麻倉氏:今回のCEATECは、ロボットやウェアラブルなどの展示が目立ちました。一方でテレビは減少し、スマートフォンはHTCやファーウェイといった中国メーカーしかいませんでした。新しい分野へのシフトが進んでいるといった印象です。
しかし、テレビ関連展示には面白いものがありました。例えば、三菱電機の“REAL 4K”(LS1シリーズ)と関連する展示は大いに注目に値します。なぜなら、4K対応は当たり前になりましたが、三菱ほどはっきりと“未来のテレビ”を明確に打ち出したメーカーはほかになかったからです。それは、赤だけとはいえ、UHDTV規格の色域「BT.2020」を80%以上カバーしたことです。
以前も触れましたが、4K/8Kを海外ではUltraHDと呼びます。BT.2020は、ITU-Rのテレビジョン委員会が打ち出したUltraHD規格で、色域としてのBT.2020、120Hzのフレームレート、10bitの色深度などを規定しています。そしてBT.2020は、もともとレーザー発光でないと得られない色範囲を想定しています。今後の4K/8Kテレビは、このBT.2020の色域をいかにカバーしていくかが重要になりますし、レーザー光源を使って赤だけでもカバーできている三菱は優位なのです。一方でパナソニックなどはBT.2020対応とうたっていますが、それは“BT.2020の入力があったときは、今の色域にうまく縮めてあげるよ”という意味です。
構造も面白いです。今まではエッジライトの部分に赤色レーザーを付けてシアン色のLEDと組み合わせていました。対して今回はレーザーはエッジにあり、シアン色LEDは直下型という配置になっています。レーザーは直進性が高いので拡散させる必要があり、そのような構造になっているのですが、赤以外は直下型のため、ローカルディミングや将来のHDR(ハイダイナミックレンジ)技術を導入する下地ができました。赤色レーザーというデバイスを使って未来志向のテレビを作りました。
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