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買い物直後にクーポン配信、JCBがクレジットカードで「O2Oビジネス」を始めたワケ

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 現金以外の決済手段として、身近な存在であるクレジットカード。日本全体での利用額も年々増えつつある。日本クレジットカード協会の調査によると、ショッピング利用額は2010年度の約3兆4000億円規模から2013年度は3兆8600億円規模に増加しており、各事業者が展開するカードの種類も増える一方だ。カードを選ぶ際に「クレジットカードなんてどこも同じ。違うのは年会費とポイントの還元率ぐらいでしょ」と考える人もいるのではないか。

 しかし、最近は各事業者が「サービス」で差別化を図る方針に切り替えつつある。都市部を中心にカード払いに対応する店舗やサービスが一般的になっており、カード払い対応店舗を増やすだけでは競合他社との差別化がしにくくなったためだ。最近では、ポイント還元率の高さや特典で差別化を図るケースも見受けられるが、利益の減少をともなうぶん、事業者側としては“できれば避けたい”手段なのかもしれない。

 競合に対して優位に立てる、新たなビジネスチャンスはないか——。この秋、「JCBカード」を取り扱うジェーシービーが新たな取り組みを始めた。2014年10月にクーポン配信サービス「イマレコ!」の実証実験を新宿でスタート。クレジットカードの利用履歴などを活用し、現在地周辺の店で使えるお得なクーポンをリアルタイムで配信するという。同社が新たなマーケティング施策に乗り出した狙いはどこにあるのか。開発プロジェクトに携わったキーマン4人に聞いた。

photoプロジェクトのメンバー。左から日立製作所 社会イノベーション事業開発室 織田稔之氏、ジェーシービー 加盟店事業統括部門 井上庸氏、川口潤氏、花田信人氏

“変化”を迫られるクレジットカード業界

 イマレコ!という名前は「IMA-RECOMMEND!」の略。ユーザーが今欲しくなるものを勧める、リアルタイム性を強く意識したクーポン配信サービスだ。スマートフォンに専用アプリ(無料)を入れて、クレジットカードの情報などを登録しておくと、定期的にジェーシービーからクーポン(ギフト)が受け取れるほか、JCBカードを使って支払いを行ったタイミングで、周辺地域の加盟店で使えるクーポンが送られる。

 例えば、Aさんが新宿の百貨店で商品をJCBカードで購入したとする。すると、クレジットカードの決済システムと「イマレコ!」のシステムが連携し、カードの信用照会(オーソリゼーション、利用店舗と会員情報が含まれる)および、会員の属性情報(性別や年代)やジェーシービーが保有する統計データ分析によって導き出した「消費予測モデル」といった要素を組み合わせ、現在地に近い場所にある加盟店のクーポンを送るという仕組みだ。

photoクーポン配信サービス「イマレコ!」の仕組み

 ジェーシービーが「イマレコ!」のような新しい取り組みを始める背景には、クレジットカードに求められる役割が変わってきた状況があるという。「クレジットカードの価値は『現金がなくてもモノが買える』こと。客側は手持ちのお金がなくてもモノが買える。店側はお金を持っていない客にも売れるので、売上機会が増える、と双方にメリットを提供できていたのです」と川口氏は振り返る。

 しかし、カードの会員やカード払いに対応した加盟店が十分に増え、いつでもどこでもクレジットカードが使えるようになった今、会員にも加盟店にも新たなメリットを提供できなければ、競合と差別化できなくなった。

 花田氏はイマレコ!のメリットをこう語る。「イマレコ!は、カード会員には各々のニーズに合った購入機会を、加盟店には集客促進を通じた売上アップというメリットを提供できます。クレジットカード払いへの対応というのは、機器の設置も含め、加盟店からすればコストとしか捉えられなかった面がある。それがイマレコ!では販促、つまり利益を生み出すツールになるのです」

photoイマレコ!とiBeaconの違い

 最近では、iBeaconなどスマートフォンを活用した、店舗への集客促進のサービスが増えてきている。対してイマレコ!は、クレジットカード利用者という消費意欲が高いユーザーを対象としており、会員情報によって的確にターゲティングできることが強みだ。加盟店の多さも、より個人のニーズに合った店を選びやすくなる点で有利と言える。

 リアルタイムでカードの照会データを利用できるようにした点も、競合他社との差別化につながっている。「今までも利用促進のためにキャンペーンなどをやってきましたが、これは買い物中のお客様に直接アプローチできます。購買意欲が高いタイミングで、お客様の次の行動を提案できる。これこそジェーシービーならではのサービスと言えますし、会社が目指す方針でもあるのです」(川口氏)

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