米国不正競争防止法の狙いとは?
国際法律事務所であるホワイト&ケース法律事務所は2013年5月23日、東京都内でセミナー「アジアにおけるサプライチェーンに関する法的リスクの管理ー無許諾知財使用への関与を回避するための対策」を開催。米国の不正競争防止法(Unfair Competition Act、UCA)により、製品の製造者や米国への輸入者自身が違反していなくても罰金や輸入差し止め措置が発生する可能性があるため、新たな法的リスクとして注意を訴えた。
米国では、知的財産権(知財法、IP)保護そのものは連邦/国家法に基づくものだが、その執行については各州における州法および司法長官の運用による。その運用においてここ数年厳格化が進んでおり、実際に罰金を支払うケースが出てきているという。
ホワイト&ケース東京オフィスでシニア・カウンセラーを務めるアーサー M.ミッチェル氏は「厳格化が広がる動きの中には従来の知的財産法(知財法)に基づくものではなく、競争法(独占禁止法)に基づく考え方がある。違法ソフトを活用する企業が運営費を抑えられ低価格で商品を提供する、ということが、正規のライセンス料を払う企業との競争において、公正さを阻害していると見るものだ」と解説する。
2つの新たな法的リスク
今回の不正競争防止法で懸念すべき問題は、主に2点ある。1つ目が、知財法などと異なり属地性がないことだ。米国内ではなく中国やASEANでの製造工程で違法なソフトが利用されていたとしても、米国輸入時に賠償金や輸入差し止めを求められる可能性がある。もう1つが、最終商品の製造者や販売者、輸入者自身が違法ソフトの利用などを行っていなくても訴えられる可能性がある点だ。商品の部品の製造などで、納入業者が違法ソフトを利用していた場合は、法的リスクが発生する。
知財法の専門家である名古屋大学の法科大学院長の鈴木將文氏は「違法行為の無明確性、主観的要件の不存在、責任の重さ、においてビジネスリスクが存在する」と指摘。原告者、被告者、責任範囲が際限なく広がる可能性を示唆した。
米国では各州の司法長官は選挙で選ばれるため、政治面で不正競争防止法の厳格化が利用されてきた面もあるとミッチェル氏は指摘。「各州の有力産業の競合企業となる外国企業は特に狙い撃ちされる危険性がある。特にソフトウェアの許諾を受ける意識の低いアジア企業は、ターゲットにされている」(ミッチェル氏)。
ルイジアナ州やワシントン州、マサチューセッツ州、カリフォルニア州などで既に執行に移されている。また22社が同様の法を制定することを検討しているという。既に摘発者も出ている。
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