岩手県は9月25日、「岩手県庁Ingress活用研究会」を発足する。Googleが公開しているスマートフォン向け位置情報ゲーム「Ingress」をPRツールとして使い、観光振興や情報発信を進めていく狙いだ。自治体によるIngressを使った同様の試みは全国初という。
Ingressはスマホの位置情報を利用した“リアル陣取りゲーム”。プレイヤーは青と緑の陣営に分かれ、現実世界の名所や旧跡、建物などに設定された「ポータル」をハック(チェックイン)し、三角形のフィールドを作ることで自陣のエリア獲得を目指す。ダウンロード数は全世界で500万を超え、7月にiOS版が公開されたこともあり、日本でもアーリーアダプターを中心に人気を拡大してる。
観光促進に利用するのは自治体で初めての試み。県内の観光スポット、史跡などに積極的にポータルを設けることで、全国のエージェント(プレイヤー)に岩手を観光で訪れる楽しみが増え、多くの場所を回ってもらえるのでは——と狙いを説明する。
研究会は、県庁各課の有志職員計10人で構成。(1)県内の観光地をポータルとして申請してもらうための方策の提案、(2)観光協会への啓蒙や周知、(3)プレイヤー有志とのイベント開催の働きかけ——などを行っていく予定だ。
「面白いゲームがあると知人に紹介されて」とIngressに注目するきっかけを話すのは、研究会を進める1人、県秘書広報室の保和衛さん(副室長兼首席調査監)。「自分はまだレベル1なのでひよっこですが……人を動かす力があるゲームで面白い、何かできるのではと始めてすぐに思った」。
5月に宮城県石巻市で開催されたユーザー主体のイベントもヒントになった。有名な観光地はもちろん、アクセスは悪いがおすすめの場所、地元民の目線で「ここは見てほしい」スポットなどにポータルを設置することで、県内外の観光客に新たな視点で楽しんでもらえるのではないかと考えているという。
「奥州安倍一族の悲劇巡り」「宮沢賢治ゆかりの地」「妖怪スポット」「河童伝説」など、テーマ性のあるポータルを設置することで、ただ訪れるだけでなく歴史や文化にも興味をもってもらいたいと展望を描く。
観光協会をはじめ、受け入れる側の商店や飲食店にも理解を促していく。ポータルの近くに無料の充電サービスを用意したり、各陣営を示す青と緑を使ったおみやげ品やメニューを開発するなど、今後少しずつIngressプレイヤーに優しい環境を作っていければと話す。
とはいえポータルはすぐに開設できるものではなく、個々にユーザーによる申請が必要だ。まずは県内各地での積極的なポータル申請を呼びかけるところからスタートする。
「自治体主導でできるものでもないし、一方的に提供したいわけでもない。プレイヤーのみなさんに喜んでもらえること、一緒にできることを探しながら盛り上げていきたい。まずは『岩手何やってるんだ』と興味を持ってもらえれば。ぜひポータル申請しに遊びに来てください」(保さん)
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