今年の東京ゲームショウの特徴として、メーカーが普通に「ゲーム実況者をイベントに起用するようになった」点が挙げられる。例えばDMMはM.S.S Projectとチーム湯豆腐。バンダイナムコゲームスはレトルト、キヨ、百花繚乱。エレクトロニック・アーツはえどふみ……といった具合。ゲームショウに「ゲーム実況者」が堂々と出てくるなど、少し前までは考えられなかった。
そんな「ゲーム実況」の未来について考えるトークセッションが、TGS2日目(9月19日)のドワンゴブースで行われた。ゲーム実況の現状やネタバレの是非、ゲーム実況はビジネスになるかなどテーマは多岐にわたったが、中でも面白かったのが「日本と海外の違い」。登壇者の1人、KADOKAWA常務取締役・浜村弘一氏によると、実は海外に比べると、日本ではゲーム実況は「全然されていない」のだそう。
浜村氏は今の欧米での実況人気について「ものすごい」という。「プレイステーション 4(PS4)がこの間1000万台を超えて、Xbox Oneもその4分の3くらい売れてるけど、人気のかなり大きな部分を実況が支えてるんじゃないか」と浜村氏。「彼らにとっては(ゲーム実況が)まったく新しいエンターテインメントだった。ドイツって今までカラオケ文化がなくて、それがPSでカラオケのサービスをはじめたらものすごく広がった。それに近いことが今、動画共有で起きてる」
一方で、日本は早くからニコニコ動画などで「実況」文化はあったものの、一般ユーザーの「実況」率は海外に比べて低いという。根拠の1つとして浜村氏が示したのが、PS4購入者のユーザーアンケート。PS4購入者のうち「シェア機能」に期待していると答えた人は「グラフィック」に比べるとわずか3分の1程度にとどまった。また実際に実況配信をしたことがある人も全体の3割程度と、実はあまり利用されていないことが分かった。
ではなぜ日本のユーザーはシェア機能を使わないのか? 理由の1つとして、浜村氏は日本のメーカーの「規制の多さ」を挙げる。「海外はゲーム実況についてほとんどフリー。でも日本は“ここはシェアしちゃダメ”とかすぐにフラグを立てちゃう。ストーリーは見せたくないから、メインストーリーはシェア禁止にして、結局ミニゲームしかシェアできないとか」。一方で、欧米はどうかというと、「向こうはMinecraft動画の盛り上がりとかを生で見てるから、(動画を)出さなきゃ負けるみたいな流れがあった。このあたりの理解が進めばPS4は(日本でも)もっと伸びるのでは」と浜村氏は分析する。
また浜村氏の予想で面白かったのが、「おそらくここ1〜2年でホラーゲームがいっぱい出てくる」というもの。「ホラーゲームは実況に向いてる。ビックリした顔をいっぱい流すことで多くのユーザーに遊んでもらう、っていう流れがきっと流行る」
その一例が、先日KONAMIの小島秀夫監督がリリースした「P.T.」だという。「小島さんの『P.T.』はまさに実況ありきのゲームだった。みんなが実況するっていう前提でゲームを作ってある。今は(ゲーム実況をどう扱うかの)転換期だけど、小島監督があれをやったってのは大きい。今後そういう(実況されることを見越した)ゲームの作り方は増えていくはず」
もちろんゲーム実況がゲームにとってプラスになる場合もあれば、逆にマイナスになる場合もある。浜村氏はこれからのメーカーとゲーム実況の関係についてこう語った。「任天堂はすでにYouTubeでの動画投稿を認めてる。今は様子を見ているメーカーが多いけど、これからはみんながどうするか答えを持つようになる」
ゲーム実況に対する風向きは、少しずつではあるが変わりつつあるようだ。
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