従来のデマンドレスポンスは電力不足の事態が想定されるたびに、電力会社などから利用者にメールで連絡をとり、それを受けて利用者が節電に協力する、という「手動」の仕組みである。この一連の流れを自動化する取り組みが米国を中心に進んでいる。
「自動デマンドレスポンス(ADR)」と呼ぶ仕組みで、電力会社などからのメッセージによって利用者側の空調機器や照明機器を自動的に制御するものだ。手動に比べて対応時間が短くなり、あらかじめ設定した手順によって機器を適切に制御することが可能になる。メッセージの送受信や機器の制御のために「OpenADR」という国際標準規格の策定も進んでいる(図1)。
日本国内では経済産業省がOpenADRに準拠した日本版の「デマンドレスポンス・インタフェース仕様書(1.0版)」を規定して普及を図っている。今夏から早稲田大学が経済産業省の補助を受けて、東京都新宿区の大学構内にある「新宿EMS実証センター」でADRの実証実験を開始する予定だ(図2)。
実証実験には経済産業省のほかに25社の事業者が参画する。東京・中部・関西の3電力会社に加えて、ガス、通信、IT、電機、自動車、住宅メーカーの大手がメンバーに入っている。すでに電力会社が運用中のデマンドレスポンスシステムと連携する形で、OpenADRによる信号の送受信を実施して、HEMS(家庭向けエネルギー管理システム)や各種機器との相互接続性を確認する。
さらに全国4地域で進められているスマートシティの実証実験とも組み合わせる。各地域のCEMS(地域エネルギー管理システム)にADRの信号を送信して、広域の実用性も検証する計画だ。早稲田大学は新宿EMS実証センターにスマートメーターや各種の発電・蓄電機器を設置して、ADRを含む先進的なエネルギー管理システムの実用化に取り組んでいく(図3)。
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