日本IBMは7月24日、中型メインフレームの最新モデルとなる「IBM zEnterprise BC12(zBC12)」の国内提供を発表した。zBC12では2012年夏に発表したハイエンドモデルのzEC12で取り入れたアナリティクス、ハイブリッド、セキュリティの要素にモバイルを加えている。記者会見したマーティン・イェッター社長は、メインフレームのさらなる成長と技術的進化を強調した。
zBC12は50MIPSから利用できる中規模基幹システム向けの最新マシンとなる。基本性能では4.2GHzで動作する30ナノ/SOI技術によるCMOSプロセッサの採用により、従来機のz114に比べてコアあたりの処理能力を36%向上、筐体あたりでは最大62%アップさせた。販売価格は790万円からで、9月21日に出荷を開始する。
取締役執行役員 テクニカル・リーダーシップ担当(CTOに相当)の宇田茂雄氏によれば、zBC12では上述した4つの要素(アナリティクス、ハイブリッド、セキュリティ、モバイル)について、zEC12からの機能強化も図ったとのこと。zBC12での機能強化はzEC12にも適用可能という。
まず、アナリティクスでは基幹システム上のデータをリアルタイム分析に利用できるように、平均4倍のデータ圧縮が可能なzEDC Expressというハードウェアアクセラレータを搭載した。サーバ間通信には10GbE RoCE ExpressというTCP/IPよりも低遅延の高速ネットワークを採用。パフォーマンスや可用性の向上のために、zEC12で採用したFlash Expressも搭載し、zBC12ではFlash Expressの動的な再構成を取れるように機能を強化。過去90日間のログ情報から機器故障の兆候を事前に検知するソフトウェアのIBM zAwareも搭載する。
ハイブリッドに関する取り組みではこれまでのメインフレーム機と同様に、WindowsやUNIX、Linuxとの異種混在での運用に対応。zBC12のメインフレームOS最新版のIBM z/VM 6.3ではCloudStackの一部APIをサポートしており、プライベートクラウドのような環境とメインフレームとの連携も可能にしていくという。
セキュリティ面ではハードウェアベースの暗号化処理機構のCrypto Express4sにより、毎秒290〜960Mバイトの大容量データの暗号化を可能にしている。これは上述のリアルタイム分析におけるデータの保護を支えるものという。zBC12では電子署名機能を追加したほか、ICカードの統一規格のEMVや暗号トークンインタフェースのPKCS#11もサポートしており、基幹業務データを保護するための各種標準への対応を拡張している。
zBC12で取り入れたモバイルの要素は、メインフレーム上のアプリケーションやデータをモバイル端末から安全で直接的に利用できることをサポートするものという。同社のモバイルアプリ開発製品のWorklight Studioや、メインフレーム向けトランザクション処理ミドルウェアのCICS JSON Capabilityを組み合わせることで、これが可能になるという。
「メインフレームは伸びている」とイェッター氏
近年は基幹システム領域におけるx86サーバやLinuxなどの採用の広がりから、メインフレーム需要が縮小しているとみるIT業界関係者は少なくない。
これに対してイェッター氏は、「確かに市場は縮小しつつあるが、基幹系システムでは高い可用性とコスト効率に対する要求が非常に高く、実はオープン系システムよりもメインフレームの方が有利。IBMのメインフレーム事業は成長しており、金融をはじめとする顧客企業の多くが継続利用を望んでいる」とコメント。zBC12で取り入れた各種の要素を例に、メインフレームを中心に企業システム全体の最適化やITトレンドへの対応を図っていくという方向性も提示している。
同氏はまた、「キヤノンのカメラやトヨタの自動車が廃れたことなどあっただろうか。彼らは常に新しいものとして製品を提供している。メインフレームも同じ。決して時代遅れのものではない」と強調した。
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