2014年夏、初音ミク誕生から7年が経った。「ボカロP」「絵師」をはじめ、ネットで人気に火が付き、音楽や映像、出版などのメジャーシーンへ活躍の場を広げるクリエイターはもはや珍しくない存在だ。DIY活動からスタートした彼ら“ネットクリエイター”が商業の場面でも安心して創作を続ける基盤を整えるため、「日本ネットクリエイター協会」(JNCA)が本格的に活動を始める。
JNCAは、音楽やイラスト、小説などネットを中心に創作活動を行う“ネットクリエイター”たちを支援するため、昨年12月にドワンゴの横澤大輔執行役員CCOを代表理事として設立された。団体として発足する以前から、ボカロP向けに著作権や健康保険、確定申告などに関するセミナーを開いてきている。
さらに活動の幅を広げるため、7月にKADOKAWAの井上伸一郎専務、クリプトン・フューチャー・メディアの伊藤博之社長、アニメイトの國枝信吾取締役、エクシングの高木司マーケティング統括部長の4人を新たに理事として選出。すでに音楽や出版、アニメなどの業界の一角を担う企業が参画することで、より多様な支援につなげる狙いだ。
「クリエイターが何でも相談できる場所に」
横澤代表理事は、設立の趣旨として、「ニコニコ動画をはじめ、ネットから多くのクリエイターが生まれており、創作物から一定以上の収入を得る人ももはや珍しくない。とはいえ、生計を立てられることと、1人の職業人として社会的に保証されていることは違う。新しいワークスタイルに合った税法や国民健康保険の知識を学んだり、1人では解決しにくい問題を相談できる場所を作ることで、カルチャー全体の発展と成長につなげたい」と説明する。
ネットクリエイターが音楽や出版の世界で活躍する際、これまでのパターンと異なるのは、必ずしもクリエイターと会社の契約関係が起点とはならない点だ。ネットで人気を得て、ファンの支持ありきで商品化・製品化に至る場合、プロデューサーやマネージャーといったマネジメント担当者がいないことがほとんど。個人レベルで制度や権利を利用・交渉するのは難しく、ネットクリエイターが集団としてもまとまりにくい現状がある。
JNCAはネットクリエイターを代弁する存在として、それぞれのクリエイターが抱える疑問や要望を吸い上げながら、既存の業界、そして社会と個人クリエイターが円滑に関係を結べる環境を整えていく狙いがある。
「ガイドラインを定めるのではなく、成功事例をシェア・推奨していくイメージ。それぞれのケースや段階で別の悩みがあるはずなので、まずは困った時に何でも相談できる場所として認知度を上げていきたい」と横澤代表理事は話す。「これまではそういう窓口すらなかった。今後、こちらが想像もしていなかったことが出てくるのでは」
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