XenDesktop 7は“Windowsアプリのモバイル化”の第一歩
まずは、同社CEO マーク・テンプルトン氏のインタビューを紹介する。
同氏は、基調講演で発表したXenDesktop 7とXenMobileについて「われわれは、“いつでもどこでも”というモバイルワークスタイルを目指している。“Go Mobile”は、このワークスタイルを実現するための重要な戦略だ。すべての企業ユーザーにモバイルを活用してほしい。まだ、多くの企業でモバイルは、在宅勤務や外回り営業時など“例外的な扱い”で利用されているのが現状だ。そこには、モバイルワークスタイルを全面的に採用しない理由があるはずだ。当社は、今後もその理由を除くための製品やソリューションを提供していくつもりだ」とリリース理由を説明した。
またテンプルトン氏は、米Yahoo! CEOのマリッサ・メイヤー氏が在宅勤務禁止を検討していた件を受けて「それぞれの企業には、それぞれに合ったワークスタイルが存在するだろう。ポリシーはそれぞれの環境次第だ。外回りや在宅勤務社員の多い企業ではモバイルワークスタイルが非常に有効だろうし、逆にほとんど社内で過ごす企業の場合には合わないかもしれない。しかし、多くの企業では、それぞれの環境に見合ったモバイルワークスタイル導入の割合があるはずだ。その割合で迷っている企業は、例えば“全社員の20%で採用し、一定期間経過後に結果を評価する”といった具合に試験導入するのはどうだろうか。このようにまずは試して評価し、その企業に相応しいルール作りをしていくのが良いだろう」とコメント。
「Project Avalon」の初めての製品である「XenDesktop 7」については、「Project Avalonは、『VDIをクラウド環境で提供することで、既存の膨大なWindowsアプリケーションをモバイル化』することが目的だ。モバイルで利用することが前提なので、3Gなど帯域が狭い回線でも問題なく使えることが重要だった。また、既存のWindowsアプリケーションをモバイル向けに最適化することも重要だ。そのためSDKを提供し、.NETアプリケーションの移行をサポートしている。今後もWindowsアプリケーションをモバイル化するためのさまざまな製品提供やサポート施策をしていくつもりだ」と語り、そのリリース目的を示した。
また、「同社製品を利用するに当たって、ライセンス形態が複雑で分かりにくい」という指摘に対しては「確かに現状は複雑な面もあるかもしれない。できるだけシンプルにしていきたい。管理サーバで簡単に一律管理できるようにするなど、ライセンス管理を簡単にしていくつもりだ。合理化し、もっと理解できるように努力していく」と説明した。
OSS化し、この1年間で開発が大幅に加速したCloudStack
続いて、シトリックスでCloudStackなどOSSを担当するオープンソースソリューション担当副社長のペダー・ウランダー(Peder Ulander)氏に、Apacheへ移管し1年経過した「CloudStack」や、4月にLinux Foundationとの共同プロジェクトになった「Xen」について聞いた。
CloudStackは、2012年4月にシトリックスからApache Software Foundation(ASF)へ移管。11月には移管後初のバージョンとなる「CloudStack 4.0.0」をリリースされている。2013年3月には移管後1年足らずで、インキュベータプロジェクトからトップレベルプロジェクト(TLP)へ昇格した。
移管後1年を振り返り、ウランダー氏は「この1年間は、CloudStackにとって“登場以来最も開発が進んだ1年間だった”と言えるだろう。オープンソース化したことで、開発者が大幅に増え、いまでは319社、560人が開発に貢献してくれており、月間平均で150以上のコードが投稿されている。コードは延べ1万7000以上に上る。これはシトリックス単独で開発していたのでは到底実現できない規模だ。多くの協力によって、いまではASFで有数のプロジェクトに成長し、TLPにも昇格できたのは大変光栄だ」とコメントした。
現在のCloudStackは、「The Podling Project Management Committee(PPMC)」が8人、コミッタ—が35人、コントリビューターが175人、デベロッパが300人で、500人以上の開発者が参加。500人のうち、シトリックス社員は45人程度だという。そのほかの企業では、ライトスケール、ネットアップ、シスコ、ジュニパーなどが参加している。
CloudStackの活用も進んでおり、「すでにワールドワイドでは、200社以上がCloudStackを活用してクラウド環境を構築している。日本ではNTTやKDDIがアーリーアダプターとして活躍しており、KDDIは中国や米国でもサービス展開しようとしている。クラウド環境のオーケストレーションも規模が拡大しており、すでに4万3000台の物理サーバでプライベートクラウドを構築しているユーザーもいるほどだ」(ウランダー氏)と説明した。
日本の事例では、CloudStackとXenServerを採用し、2000台規模の仮想サーバ構築を可能にした北海道大学を挙げた。同氏は「北海道大学は、とても良い事例だ。良いアーリーアダプターになってくれている。現在、CloudStack採用企業の業界別内訳は、50%がグローバル規模のテレコム会社だ。英国BT、チャイナテレコム、ドイツテレコム、韓国KT、KDDI、NTTコミュニケーションズ、IDCフロンティアなどがCloudStackを採用している。残り50%は、公共や大学が多い。前述の北海道大学をはじめ、中国税当局、スイス当局などもユーザーだ。一般企業ユーザーでは、Nokiaなどが挙げられる。一般企業の場合、調査やテスト環境の構築に利用するケースが多い」と述べる。
また、4月にThe Linux Foundationとの共同開発を発表した「Xen」は、すでにLinux Foundationの下の「Xen Project」として開発が進んでおり、グーグルやシスコ、富士通、Amazon Web Servicesなどが参加しているという。そのほか、シトリックスは「Software Defined Networking(SDN)」の新たなオープンソースプロジェクト「OpenDaylight Project」にも参加。今後、Xenとともに協力していくとした。
日本はインフラが整っているので、モバイルワークスタイルを導入しやすいはず
最後に、シトリックス・システムズ・ジャパンの代表取締役社長であるマイケル・キング(Michael King)氏に話を聞いた。
まず、キング氏は日本のモバイルワークスタイルの現状について「通信環境は世界トップクラス。10点満点中文句なしの10点だ。しかし、現状のモバイルワークスタイルの導入度合いは3点程度ではないか。スマートフォンやタブレットなど端末も普及しているし、仕組みや制度を導入すれば、すぐに7〜8点に上がる素養がある」と評価。
一方、日本でモバイルワークスタイル普及の障壁となっているものについては、「日本独特の文化的な側面もあると思う。労働に関する各種規制もある。労働組合も大企業では導入障壁となるケースもあるだろう。また、日本のユーザーはセキュリティを非常に気にするので、その点をクリアにすることも重要だ」とコメントした。
また、モバイルワークスタイルを導入することで得られる日本固有のメリットについて「日本では子どもの保育の問題もあり、時短勤務などをしている女性社員が多いが、彼女たちこそモバイルワークで環境が改善されるはずだ。日本は電車内の通信環境も良いため、移動中にも仕事ができるだろう。これでワークライフハーモニーが改善し、日本全体が良くなると信じている」と説く。
キング氏は、日本における普及・啓蒙活動について「やはり、教育の力が最も重要だ。まずは経営層に訴求するために、定期的に米国のトレーニングセンターへ参加してもらっており、毎年2倍の勢いで参加者を増やしている状況だ。また、東京オフィスにも実際に体験してもらうためのソリューションセンター『EBC(Executive Briefing Center)』が間もなくできる。EBCは世界で5番目で東南アジア唯一だ。多くの参加者は、トレーニングセンターで1日勉強することで気づきを得て、必要性を分かってもらえるケースが多い。ぜひ、東京のEBCがオープンした際には多くの人に来て気付きを得てもらいたい」と意気込みを語った。
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