シャープの「UD1シリーズ」は、“AQUOS”(アクオス)ブランドを冠した初の4Kテレビだ。昨年末に投入した「ICC PURIOS」がホームシアター向けのプレミアム製品という位置付けだったのに対し、今回は「リビングからパーソナルまで、4Kテレビのすそ野を広げる」(同社)。ただし、その画作り(画質チューニング)は、従来のAQUOSとは一線を画すようだ。
近年のAQUOS上位モデルは、「クアトロン」に代表されるように色再現性にこだわってきたが、UD1シリーズの開発を担当した同社デジタル情報家電本部の小池晃氏は、「今回目指したのは、派手さではなく、本物を見ているかのようなリアリティー。ポイントは、奥行き感と立体感だ」と話す。
もちろん“3D”の話ではない(UD1シリーズはアクティブシャッター方式の3D表示にも対応している)。例えば、同社がNHK放送技研と共同開発した8Kディスプレイを見たことのある人なら、“2Dなのに自然な立体感”を想像できるかもしれない。そしてUD1シリーズのデモンストレーションでも、夜景を空撮したシーンなどで8Kほどではないものの奥行きと立体感を感じることができた。高い解像度とコントラスト(ダイナミックコントラストは1000万:1)が大きな要因だろうが、ソースが映画BDだったことを考慮するとアップスケール技術も一役買っているはずだ。
小池氏によると、もう1つ重要な要素があるという。「画面のユニフォミティー(輝度均一性)が、奥行きや画面内の遠近感を実現する大きな要素。画面に輝度ムラがあることは、絵画に例えると“ゆがんだキャンパス”に描くようなものだ」(小池氏)。
実はこのセリフ、「ICC PURIOS」の説明でも聞いたことがある。輝度均一性は、ICC PURIOS開発時に徹底的にこだわった部分であり(そのために製品発表がかなり遅れた)、プレミアム機で培った技術が次の製品に生かされた例といえるのかもしれない。
変わったのは“設計工程”
ただし、262万5000円もする「ICC PURIOS」と、65万円の「LC-60UD1」で、同じことはできない。例えばICC PURIOSでは、直下型バックライトとそれを細かくコントロールする制御技術を導入し、業務用マスターモニターを上回るレベルの輝度均一性を実現した。製造ラインでは、1台1台に対して入念な調整とチェックが行われる。
一方、UD1シリーズのバックライトはエッジ式だ。詳細は公表されていないが、液晶パネルの上下あるいは左右にしか光源がなく、導光板を使って画面全体に光を回す仕組み。直下型に比べるとコストは安く、それだけに明るさを均一に保つことは難しい。
「確かに、ICC PURIOSのように1台ずつ細かい調整を行うことはできない。しかし、LEDと導光板のギャップ(隙間)、その取り付け方といった部分の精度を上げることで、バックライトと液晶パネルの距離のバラツキを抑えることができた。生産技術というより、“設計工程”の改善が効いている」(小池氏)。
こうした取り組みもあって、UD1シリーズはTHXの“お墨付き”といえる「THX 4Kディスプレイ」認証を取得した。これは「エッジ式バックライトの製品としては初めて」という。
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