キヤノンITソリューションズは8月26日、仮想映像に現実映像を融合するMR(Mixed Reality)システム「MREAL」の新製品となる人物合成映像システムを発表した。仮想映像空間に実際の人物全体を正しい位置関係で表示し、従来に比べてより現実に近い環境をリアルタイムに再現する。
MREALは、実寸大の3DCGの画像を現実空間の映像と融合してヘッドマウントディスプレイ(HMD)に投影するシステムで、HMDを装着した人の動きに合わせて3DCGをリアルタイムに表示できるのが特徴。2012年7月に販売を開始し、これまで製造業や建築・建設業、大学など31機関に35システムが導入されている。
例えば、製造業ではモックアップなどを用意することなくCADデータで人が実際の機器を動かすのと同様の体験を検証できるため、開発段階における手戻りの削減や期間短縮など効果を生んでいる。建築や建設などのシーンでは、実際の現場画像に物件などのCGを重ね合わせて表示することで、臨場感のある環境を仮想的に再現できるという。
同社によると、従来のシステムはユーザーのHMDに映像を表示することが前提であったため、合成表示できるのはHMDを装着している人の手元など体の一部分だけであった。今回のシステムでは3Dステレオカメラで撮影した実写映像から人物全体をカラーマスキング機能の処理によって抽出する。3Dステレオカメラの視差を利用したリアルタイムな画像処理も行って空間内での人物の位置を把握し、仮想空間内に人物の全体像を正確に表示できるようにした。
また、HMDに表示される主観映像に加えて3Dステレオカメラによる客観映像も利用する。これによって、例えば工場の生産ラインの設計する場合なら、CADデータをもとにしたCG映像に全身の姿を合成して姿勢の変化や動線を多角的な視点から検証できる。
住宅販売などのシーンでは、仮想的に再現した部屋の画像に家族の映像を合成し、現実に近い感覚で生活イメージを体験してもらうことが可能だという。既に大和ハウス工業が新システムを先行導入しており、同社が4月に都内で開設した戸建住宅体感施設「TRY家Lab」で来場客にサービスを提供しているとのこと。マーカーを利用すれば屋外現場などの作業計画の立案にも応用可能だ。
主要なCADソフトのデータに加えて、レーザースキャナで測定した建物などのデータやGoogle Earthなどの立体画像にも実際の人物の映像を合成できるという。
新システムは用途に応じて合成処理する背景画像などのデータや機器構成をカスタマイズ提供する。販売価格は個別見積りとなるが、想定価格は概算で約2000万円から。同社は今後1年間で20システムの導入を見込んでいる。
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