自動改札にかざして電車に乗る。レジでかざしてお金を払う。レストランでかざしてクーポンを受け取る……FeliCaチップを内蔵した携帯電話をお財布のように使えるサービス「おサイフケータイ」は、2014年で10年を迎えた。
カードタイプのFeliCaの歴史はさらに古い。FeliCaは近距離無線通信用の非接触ICで、“かざす“ことで利用でき、処理速度の速さとセキュリティの高さを生かして、交通乗車券や電子マネーとして広く利用されている。JR東日本が推進する交通系サービス「Suica」や、決済サービス「Edy」(現在は楽天Edy)「nanaco」「WAON」などに採用されて普及し、最近では、「モバイル スターバックス カード」がモバイルFeliCa向けサービスとして始まるなど、交通乗車券や電子マネーとして使える場所は現在も年々増えてきている。さらにここ数年は、複数の決済サービスに対応した端末がコンビニを中心に普及したこと、全国のIC乗車券が相互利用を始めたこともあって、日本全国どこでも「かざす」シーンを目にすることは日常的になってきている。
かざす場所が増えた半面、その使い方やユーザーは変わっただろうか? 冒頭で書いた通り、2004年にスタートしたおサイフケータイは今年で10周年を迎えた。しかしここ数年はグローバルモデルのスマートフォンが普及している。特に利用者が多いアップルのiPhoneは非接触ICを搭載しておらず非対応。Google Nexus 5などは、NFC(FeliCaと互換性のある近距離無線技術、参照リンク)は搭載しているがおサイフケータイには非対応。こうしたおサイフケータイ非対応のスマートフォンを使うユーザーが増えていることもあり、おサイフケータイの利用者は伸び悩んでいるのが現状だ。
FeliCaとおサイフケータイはこれからどう進化していくのだろうか。ソニーとフェリカネットワークスが7月17〜18日に開催したイベント「FeliCa Connect 2014」の展示内容を元に、最新の技術や製品を紹介していこう。以下本記事では、(1)カードタイプのFeliCa、(2)おサイフケータイ、(3)他の通信技術やクラウドとの融合と、大きく3分野に分けて紹介する。
カードタイプFeliCaの最新事情
液晶画面付き、複数のサービスを1枚に入れられる「インタラクティブ・FeliCaカード」
参考出展されていた「インタラクティブ・FeliCaカード」は、複数のFeliCaサービスを1枚のカードで利用でき、しかもBluetoothでスマートフォンやPCと通信できるというインタラクティブなカードだ。カードには小さな液晶ディスプレイがついており、電子マネーの残高やポイントなどをカード単体で確認できる。
現在のFeliCaカードは、1枚に1つのFeliCaサービスしか格納できないため、電子マネーやポイントサービスなど複数社のサービスを利用するには、複数枚のカードを持つか、おサイフケータイを使う必要があった。また、残高やポイントを確認したり、利用履歴を見たりするにはFeliCaのリーダー/ライターが必要だった。インタラクティブ・FeliCaカードであれば、カード単体でも、対応アプリをインストールしたスマートフォンとでも確認できる。つまりBluetoothで通信ができれば、iPhoneのようなおサイフケータイではないスマートフォンでも、インタラクティブ・FeliCaカードとの組み合わせで複数のFeliCaサービスを利用できることになる。
インタラクティブ・FeliCaカードは、2015年度に導入、商品化目標。価格は数千円台前半を目指しているという。
接触IC+FeliCa+TypeA/TypeBの多機能1チップカード
同じくカードタイプの未来のFeliCaとして参考展示されていたのが、接触ICと複数の非接触ICの機能を1チップで実現する、多機能1チップカードだ。
日本では非接触ICを利用した決済サービスというとFeliCaを使ったものが主流だが、海外では事情が異なる。MasterCardの「PayPass」や、VISAの「payWave」など海外のクレジットカード系決済サービスは、Type AやType Bといった、FeliCaとは異なる規格の非接触ICで展開されている。
参考出展されていたのは、これら複数の非接触ICを利用した決済サービスと、クレジットカードに搭載されている接触ICの機能(EMV)をすべて1チップにまとめたカード。2015年度のチップの商品化を目指しているという。
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