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競争せず、適応しているだけ? 彼氏・彼女ができない理由は2つ

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仕事をしたら“動物”のことが分かってきた

 「また騙(だま)されてしまった。正直者がバカをみる世の中っておかしい!」——このように感じたことがある人も多いのではないだろうか。

 悪い奴が幅を利かせている社会は、困ったものだ。人を裏切って、不誠実で、暴力を振るう人がトクばかりしているのなら、こうした勢力が増えているはず。しかし、実際は違う。人を裏切らず、誠実で、暴力を振るわない人が、大多数を占めている。この、一見矛盾するような状態はどうして存在するのだろうか。

 ひょっとしたら、悪い奴はそれほどトクをしていなくて、いい人のほうがトクをしているのかもしれない。知らず知らずのうちに、人は“いい人”を演じることで、いろいろな恩恵を受けているのかもしれない。そんな疑問がわいてきたので、動物行動研究家の竹内久美子さんに話をうかがった。

 なぜ? 動物に詳しい人なの? と思われたかもしれないが、動物の「生き方」と人間の「生き方」には何らかの共通点があって、そこから学べることも多いからだ。聞き手は、Business Media 誠編集部の土肥義則。3日連続でお送りする。

 →なぜ世の中に悪い人は少なく、いい人が多いのか(前編)

 →人類最大の罪は「農業」? 日本人の人口減少問題を考える(中編)

 →後編、本記事


プロフィール:竹内久美子(たけうち・くみこ)

 1956年、名古屋生まれ。1979年、京都大学理学部卒業後、同大院博士課程を経て著述業に。専攻は動物行動学。理学修士。1992年、『そんなバカな! 遺伝子と神について』(文藝春秋)で、講談社出版文化賞科学出版賞受賞。その他の著書に、『女は男の指を見る』『本当は怖い動物の子育て』(いずれも新潮新書)、『指からわかる男の能力と病』(講談社+α新書)などがある。近著は『騙し合いの法則 生き抜くための自己防衛術』(講談社)。


実質的に「精子競争」が終わった

土肥: 竹内さんは動物行動から男女の恋愛行動も分析されています。明治安田生活福祉研究所が7月に「20〜40代の恋愛と結婚」という調査結果を発表しました。独身男女に聞いたところ、20代男性で「現在恋人がいる」のは22%、「交際経験がない」のは40%。一方、20代女性で「現在恋人がいる」のは42%、「交際経験がない」のは23%。

 次に、30代男性で「現在恋人がいる」のは15%、「交際経験がない」のは33%。一方、30代女性で「現在恋人がいる」のは33%、「交際経験がない」のは16%でした。

 数年ほど前から「草食男子が増えている」と言われていますが、この調査結果の数字について、どのように思われますか? ワタシは現在40代半ばなのですが、自分が20代だったころ周囲で「恋人がいる」という人はもっと多かったと思うのですが。

yd_kumiko1.jpg20〜30代独身男女の特徴(出典:明治安田生活福祉研究所)

竹内: 男女ともに「現在恋人がいる」人が少なくて、びっくりしますね。女性よりも男性のほうが割合が低いのですが、なぜここまで低いのか。2つの理由があると思っています。1つめは実質的に「精子競争」が終わったから。

土肥: どういうことでしょうか?

竹内: 複数の精子がひとつの卵(よくニュースなどで「卵子」という言葉を使います。しかし精子と比べて圧倒的に大きく、自分で動く力もないものに「子」というネーミングは不自然だと思います。私はかつて学校で習った「卵」という言葉をあえて使うようにしています)と受精するために、激しい争いを繰り広げるわけですよね。女性はひとりの男性とだけ交わるのではなくて、何人かと交わることがある。

 その結果、精子の数が多かったり、精子の質がよかったり、精子が元気だったり——。そうした精子を持つ男性の子どもを身ごもる結果となる。その繰り返しによって、人間の精子の質はよくなっていくと言われているのですが、コンドームを使用すれば、何人もの男と交わったとしても実際には競争がなくなるわけですよ。

土肥: ふむふむ。

竹内: 日本でコンドームが出回ったのは1970年代なので、それ以降、「精子競争がほぼなくなった」と言えるのではないでしょうか。つまり、元気な精子、質のいい精子を選べる——というこれまでの進化の歴史にピリオドが打たれてしまった。1970年代ということを考えると、いまの30代後半から若い人たちになってきます。

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