7月、アイドルグループ「ゆきこたんズ」のデビュー曲「Milk & Coffee Love」のPVがニコニコ動画で公開された。アップテンポな曲調にキュートな歌詞、楽器を演奏し歌い踊る6人グループの映像の上に「かわいすぎる」「スイートジェットたん大好き」などのコメントが舞う。
6者6様の彼女たちは、ユーザーが作り上げた「雪印コーヒー」の公式擬人化キャラクターだ。姿形やキャラ設定はもちろん、名前や歌声までファンとともに1年以上かけて作り上げてきた。企業が公式キャラクターを持つことはもはや珍しくはないが、なぜ歌もビデオもありのアイドルグループに? ……“プロデューサー”にこの1年の軌跡を聞いてきた。
「雪印はじまったな」
「雪印はじまったな……」——雪印メグミルクが看板商品の1つ「雪印コーヒー」の“公式擬人化キャラ”を募集するイラストコンテストを始めたのは昨年4月のことだった。イラストSNS「pixiv」のユーザーからアイデアとイラストを募り、最終的な1体を「国民投票」で決めるという「オレたちのゆきこたんプロジェクト」。硬派な老舗というイメージのある同社が“萌えキャラ”を打ち出してきたことに「どうした雪印」「公式の暴走」などネットで話題を集めた。
コンテストは、社内で「雪コー」と親しまれる同商品の生誕50周年を記念した取り組みの1つ。黄色と茶色に赤のアクセントの入った紙パックは年代を問わず多くの人に親しまれており、認知度は高い。その一方で、最も多いのは「懐かしの味」として長年愛飲する40代男性。若年層に向けてリーチできていないという課題があった。若者に愛着を持ってもらうために、一緒にキャラクターを作り上げていく——目的は擬人化や“萌えキャラ”化そのものではなく、彼らに「オレたちの」雪印コーヒーと感じてもらうことだ。
ネットで話題を集めたこともあり、予想を超える6843点のイラストが集まった。最終ノミネート作品に選ばれた6体のキャラクターから、9月に公式キャラクター1人が決まり、「ゆきこたんプロジェクト」は1つのゴールを迎える予定だった。……が。
投票に向けて販売したそれぞれのキャラクターを描いた限定パッケージは大好評。通常の1.5〜2倍の売り上げを記録する日もあり、Twitterなどで「ゆきこたん難民」同士が在庫のある店舗情報を交換する様子も見られたという。コスプレイヤーとコラボした「リアルゆきこたん」イベント、コミックマーケット84への出展など、活動を見守るファンと直接触れ合う機会も重ね、チームメンバーの間でもキャラクター1人ずつへの思いが強まっていったという。
「どの子もそれぞれファンのみなさんに愛されているので、誰か1人に決めずにこれからも一緒に楽しんでいきたい気持ちが……。絵師さんたちの中でも設定が細かくあって、まだ“顔見せ”しか出来ていない現状もあった。個性を出してさらに愛してもらうのを次の目標に定めた」と、ゆきこたんプロジェクトを統括する同社市乳事業部飲料グループの竹谷和章さんは“アイドルグループ”に発展した理由を話す。
同年7〜8月に行った「国民投票」では総数17万266票ものユーザー投票を獲得。プロジェクト開始から約半年で集まった注目と応援が予想を上回る数字になってはっきり表れたことが、プロジェクトを続けていく確信につながったという。1位のキャラクターは“センター”に決まり、まるで本当のアイドルグループのように第2章は幕を開けた。
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