「海賊版天国」と揶揄される中国。そんな中国でも「ある一面において」は、改善している。しばらく中国の日本絡みの海賊版の話は聞かなかったが、5月、6月といろいろニュースが出てきたのでまとめて紹介したい。
日本の文化庁は「海外における著作権侵害等に関する実態調査(中国)(平成25年5月)」を発表した。中国の上海、北京、広州の3大都市の市民を対象にヒアリングと現地販売実態調査を行い、内陸の重慶も加えた4都市の老若男女にアンケートをとったもので、合計500ページを超える資料が無料で読める。莫大な量ではあるが、気になる部分だけでも拾っていくと読めるので興味がある読者はさらっとでも読むと、そこに使われた税金が意味を持つというもの。
さてこのレポートによれば、3カ月内に約36%が日本のアニメの入手・視聴の経験があり、約31%がコミックの入手・視聴経験があった。中国人にとって日本のコンテンツは母国中国に次いで人気で、特にアニメ・コミック・ゲームの頭文字をくっつけた「ACG」という中国のサブカルが人気だが、ゲームについてはゲーム機のゲームでは14%、オンラインゲームでは14%、スマホゲームでは11%が触れた経験がある。テレビ番組や映画や着メロを含む音楽や、小説などの雑誌や、ファッション誌などの雑誌はそれより少なく1割程度、ないしはそれ以下となっている。
日本コンテンツの年間平均入手・視聴件数は4都市の単純平均で、オンラインが207件、パッケージが40件となっている。1日にいくつも日本コンテンツに触れるだろうが、あえて単純計算すれば、3日に2日は日本コンテンツに触れる日があるということだ。
中国ではようやく日本の情報が徐々に解禁されてきているが、一方で反日デモ後、中国国内で日本のイベントが中止されるなど、一見すると日本の情報がシャットアウトされている。だが、目に見えないところでは多くの人が日本発のアニメやコミックを楽しんでいた。調査におけるグループインタビューにおいても「反日デモ後にテレビ番組はなくなったが、利用者はネットで見ていた」とし、日本コンテンツとのつきあいで支障はなかったとしている。
“海賊盤大国”に中国当局は反論
アニメとコミックが人気なのが上海と広州だ。実際この2都市では、日本のアニメなどのグッズ販売イベントがファンの間で大人気。ところがこの2都市はひとくくりにはできない。広州のイベントでは日本の業者による正規品販売ブースに並んでニセモノグッズ販売業者が堂々とブースを構え、呆れて日本の業者が正規品販売ブースを畳めば、そこにニセモノ業者が入りニセモノを販売する──という話まで聞く。これは上海にはない現象だ。レポートでも、広州の著作権についての認知や罪の意識の低さは指摘されている。
アンケートで集計した各都市でのアニメやゲームなどの海賊版利用率からその都市のアニメやゲームなどのジャンル別の被害額を推計したところ、4都市での被害額はネット広告費換算で約19億円、有償ダウンロード換算で約5600億円となる。さらに重慶を中国標準として中国全体の人口に換算すると、ネット広告費換算で約135億円、有償ダウンロード換算で約3兆8000億円となる。
中国国外で中国の海賊版レポートが発表されると黙ってないのが中国。たとえばMicrosoftなど大手ソフト会社で構成するBSA(Business Software Alliance)が毎年5月にビジネスソフトの違法コピー率を発表する中で、中国の違法コピー率は約8割だとレポートしているが、毎年その発表直後に中国版権局が3割だと反論するレポートを発表している。それぞれの根拠だが、BSAメンバーであるMicrosoftやAdobe Systemsなどの中国での海賊版インストール率が8割というのがBSAの言い分。一方、OSなど一部ジャンルを除き著名中国ベンダーによる(フォトレタッチソフトも含めて)フリーウェアの利用が当たり前になっている中国で、PCに入っている海賊版のソフトは全体の3割だ、というのが中国側の言い分である。PCに必須となるソフトを有料でリリースするMicrosoftは最も被害を被りやすい。
文化庁のレポート発表後、やはりというか中国版権局が「製造、販売、伝播、使用の様々な方面から分析しておらず一面的で非科学的」「3兆8000億円という数字の根拠が、発展している都市を基本としていておかしい」と反論。加えて「我々は『剣網行動』という海賊版取り締まりを8年間にわたって展開している」とコメントしている。ネットでの伝播が当たり前となる今、製造販売の現場を押さえる必要はないが、しかし重慶をもって「標準」として中国全土を推定するのにはちょっと乱暴ではないかとは筆者も思うところ。よってあくまで4都市についてのレポートであり、被害額の数字は参考程度として考えたほうがいいだろう。
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