連載「そのひとことを言う前に」
職場で感じるストレスの原因は、うまくコミュニケーションがとれないことによるものが多いようです。本連載では、伝え方や接し方、聴き方に至るまで職場でよくあるエピソードをもとに、仕事や物事がより円滑に進むようなコミュニケーションのヒントをご紹介します。言葉を受ける側の立場や気持ちを理解し、自分が発する言葉について見直してみてはいかがでしょう。
突然ですが、会議などの話し合いをしているときに「“話を聞いてもらえる人”と“話を聞いてもらえない人”がいる」と感じたことはありませんか?
客観的にみてテーマから外れた意見でもないし、意味がないわけでもないのにメンバーの反応はイマイチ……。そんな人がいる一方で、話し出すとすぐ参加者が身を乗り出すような雰囲気を作り出してしまう人もいます。
もちろん、立場の違いが影響することもあります。偉い人の意見はみんな聞くでしょうし、実際に通りやすいもの。しかし、そういった要因を除いても、発言が重く扱われる人と軽くみられがちな人がいるのは事実です。両者の違いはどこから生まれるのでしょうか。
人から話を聞いてもらえなくなる“否定キーワード”
発言が軽く扱われる理由としてありがちなのが、意見を言うときに“否定”から入ってしまうパターンです。特に反対意見を言うときに顕著に表れます。次の例に挙げる、Bさんのような発言をした経験はありませんか?
Aさん: 予算や納期までの時間の都合を考えると、やっぱり今回はこのA案で行くしかないと思うんですよね。
Bさん: でもさー、A案って前回同じようなことをやって、クライアントからダメ出しもらったじゃないですか。どうせ今回も通りませんって。
「でも」「だって」「どうせ」——。こうした否定の言葉は、頭文字をとって「3D」とも言われています。自分の発言に対して否定語で返されると発言しにくくなりますし、不愉快に感じる人もいるでしょう。しかし、相手の発言に対して、無意識にこうした言葉で反応してしまう人は、案外多いのです。このほか“うそ”“マジで”“それはないでしょ”といった言葉も否定語と捉えられやすいので、注意が必要です。
こうした否定の言葉に加えて、反対意見がただの「知識の振りかざし」になったり、自分の自慢話のようになったりするパターンもあります。
パターンA:知識の振りかざし
Cさん: 私が担当した別プロジェクトでもA案を採用して、そのときは成功したけど、今回はまずいと思うんですよ。ちょっと考えたら分かりそうだと思うんだけどね。なんでかと言うとさ……(以下、延々続く)
パターンB:自慢話
Dさん: やっぱり案件の規模も違うし、今回は小規模だしね。私が担当した別プロジェクトでは、いろんな事やったし、予算もふんだんに使えましたしね。今回は、ほら違うから……。
知識の振りかざしと自慢は、両方を兼ねることも多く、話が長くなる傾向にあります。話の趣旨がよく分からないまま時間が過ぎ、話の流れを戻すのに苦労するため、嫌がられやすく、その結果、相手の“意見を聞こう”というモチベーションを削いでしまいます。一方、これらとは逆に、気の使い過ぎが、相手の“聞く気”を失わせることもあります。
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