家とクルマとの関係が変わりつつある。特に電気自動車(以下、EV)との間で顕著だ。V2H(Vehicle to Home)と呼ばれる、EVの持つ大きなエネルギーを家に供給する技術が大きく前進したからだ。一体、何が変わったのか、どこまでできるのか、今後どうなっていくのか。開発状況や将来展開を関係者に聞いた。
最初に、太陽光発電(以降、一部でPVと表記)のシステム採用比率が高く、先進的な住宅を供給する企業を訪れた。積水化学工業 住宅カンパニー 商品開発部 商品企画部 自立型住宅プロジェクトヘッドである太田真人氏と、同課長補佐の寺本邦仁子氏に聞いた(図1)。
夜明け前のチャレンジ
和田憲一郎氏(以下、和田氏) どのようなキッカケで「グランツーユー V to Heim 」(以下、V to Heim)と呼ぶ住宅商品を企画したのか、教えていただきたい。
太田氏 これまで当社では、スピードを重視してスマートハウス商品の提供を進めてきた。確かに、EVはまだ初期導入段階かもしれない。だが、市場調査や社内アンケートから、EVには将来の市場性があると捉えている。このような中、当社としては市場が起きてしまう前、夜明け前に家とEVを関連させた商品を出さないと意味がないと考えた(図2)。
当社は2012年に家庭用蓄電池を他社に先駆けて発売しており、EVの持つ大きなエネルギー(日産自動車の「リーフ」の場合、24kWh)は魅力的である。住宅側から見てV2Hの役割は大きい。加えて、家庭用蓄電池を用いてEVと同程度のエネルギー容量を確保しようとすると、消防法の規制を受けることになり実現が難しい。
和田氏 従来のV2Hと今回のV to Heimの違いは何か。
太田氏 これまでのV2H対応の機器には課題があった。EVから家に電力を供給しようとすると商用電源(系統)をいったん遮断するため、瞬間停電(瞬断)が起こり、家電のタイマーがリセットされたり、動作中の家電が止まるといった影響があった。さらに、停電時には、太陽光発電からEVへの充電ができない。今回の商品はこれらの課題を解決したことが特徴だ(図3)。
寺本氏 このような機能を実現するためには系統連系が可能となるよう、電力会社との協議が必要だった。当社が一番に実現できたのは、太陽光発電システムの販売累積14万棟、家庭用蓄電池販売累積約7000棟など、過去からの実績が協議の相手としての信頼感につながったためだろう。今後も引き続き承認が得られるように進めていきたい。
和田氏 開発面で苦労したところは。
太田氏 商品に対する理解を社内外に広めることが大切だった。特に、社内研修に力を入れた。2014年4月の発売直前、同3月末〜4月にかけて全国各地で、技術的な説明だけではなく、顧客へのメリット、そしてEVに関する知識も含めて説明した。一通りは実施したものの、これから本格的に販売するということもあり、まだまだこれからと考えている。
寺本氏 電力会社との協議は、明確なルールが決まっていないこともあり難航した。しかし、EVの持つ大量の電気エネルギーを有効活用することは、顧客のメリットや環境貢献などにもつながる。なんとか了解していただきながら進めることができた。
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