アップル製品を紹介することが多く、メインマシンもMac、iPhone、iPadの筆者だが、いいデザインがなされた製品には賞賛を惜しまない。これまで「Surface RT」「Surface Pro」「Surface 2」「Surface Pro 2」と使ってきて、どれも応援していたが、今回のSurface Pro 3は、製品としてのポジショニングでいい割り切りができており、筆者がレビューを書かずにはいられないほど、飛躍的によくなった。
今、最もクールなノートパソコン
英語圏のメディアでは、しばしばパソコンはスペックだけでなく、そのクール度(Cool Factor)で評価されるが、このクール度においてSurface Pro 3は、かなりいい線を行っているのではないかと思う。少なくともWindows機の中ではトップクラスだろう。
Surfaceの魅力を挙げると、
- 大きく見やすいタッチパネル液晶
- 前面と背面に内蔵された2つのカメラ
- パカっと開いて本体を使いやすい角度で固定するキックスタンド
- 本体にマグネットでピタっと吸着するキーボード兼用のタイプカバー
- 筆圧を感知して表現力豊かに心地よく手描きできるSurfaceペン
- マグネットでピタっと本体に吸着する電源アダプタ
などが挙げられる。
Surface Pro 3はこれらの特徴をすべて踏襲しつつも、1つずつ丁寧に見直して、確実にいい方向に進化させている。上に挙げたリストを逆順に見ていこう。
例えばマグネット吸着型電源ケーブルは、これまでのSurfaceではピタっと吸着させたつもりが、微妙にズレていて充電に失敗しているといったことがあったが、コネクタ部に凹凸が付き、浅く差し込む形になった。そのおかげでコネクタにそれほど注意を払わなくても、ピタっと正しく吸着させられるようになり、充電を失敗することがほとんどなくなった。
Surfaceペンは、筆圧検知レベルが1024段階のワコム製から256段階のN-trig製になったため、スペック重視の人からは批判を浴びているようだが、クリエイター/アーティストならともかく、一般のユーザーにはそれほど大きな問題ではないだろう。
それよりもペンとしての質感がかなり高まったことがクール度に貢献している。おまけに本体とBluetoothで連動するボタンを備え、ボタン1つでOneNoteを起動してすぐにメモが取れるといった便利な機能の仕掛け方もクールに決まっている。
Surfaceペンといえば、これまで電源コネクタのマグネット部分に吸着させ持ち歩くことができたが、面白いギミックではあるものの、カバンの中に入れたときにペンが外れてしまうことが多かった。つまり、うまく機能していないデザインの例になってしまっていたが、これも今回からは別売りのタイプカバーにしっかりとシールで固定できるホルダーがついたことで解決した。
では、そのタイプカバーはというと、見た目は従来のものに似ているが、色合いが非常によく考えられている。Surfaceのそもそものシグネチャーカラーでもあったビビッドなシアンを残しつつ、それ以外の3色はどこか妖艶(ようえん)さを漂わせながらも派手過ぎない大人っぽいカラーリングになっている。
おそらく、法人導入のSurface Proでも、オシャレなカラフルのタイプカバーを使いたいという声が多かったのだろう。もちろん、「派手さや楽しさは悪」という発想に縛られた企業向けにはきちんと「ブラック」モデルも残されている。中にはもう少し若い色が欲しいという人もいるかもしれないが、そこはサードパーティのビジネスチャンスかもしれない。
これまでのタイプカバーは卓上用にデザインされており、ひざの上でタイプをしていると画面が手前に倒れてきてしまったりと苦労が多かったが、この問題も画面が縦に大きくなった分を生かしてピタっとハマる硬いバーが織り込まれており、ここが画面を押さえつけてくれるため安定してタイプできる。
IT関係の媒体で、デザインという言葉が色形など製品の外装だけに対して使われることが多いが、こうした問題解決のための工夫もデザイナーの役割。こうした仕事をみてもマイクロソフトの中に、優秀な工業デザイナーがいて、アップル同様、きちんといい仕事をする権限を与えられている事が分かる(メーカーの中には、いい工業デザイナーはいても、経営者がデザインを理解しておらず、装飾的な仕事しかやらせてもらえずに飼い殺しになっているケースもある)。
タイプカバーにはもう1つ、外から見ただけでは分からない変更がある。実はタッチパッドにクリック感が加わったのだ。小さな変更だが、日々の利用には大きな使い勝手の違いを生み出す。
また、これは筆者が普段、4本指でのジェスチャー操作も余裕でこなせるMacBook Proの広々としたトラックパッド(Mac版のタッチパッド)を使っているせいかもしれないが、旧Surfaceのタッチパッドは狭く、それが使いにくさの原因の1つになっていた気がする。そして今回、Surface Pro 3版では、タッチパッドの入力域が広がった。ただ、使ってみた印象では、それほど違いを感じないサイズ変更だった(この辺りはSurfaceを完全にメインマシンとして使っている人だと感じとれる違いなのかもしれない)。
キックスタンドは卓上での仕事時はもちろん、飛行機内で映画を見るのにも最強の機能だ。揺れている機内でも安定して本体の角度を保てる。映画などを見るときには、タッチカバーを外すか、キックスタンドで踏みつけるようにして開くと、きちんとキー操作を無効にしてくれる(これはキックスタンドを閉じてタブレットとして手持ちした場合も同じだ)。
Surface RTや初代Surface Proでは角度は1段階、Surface 2やSurface Pro 2では2段階の角度が選べたが、Surface Pro 3では無段階になり、開閉角は150度になった。つまり開き切った状態では、奥側が30度の傾斜で浮かび上がった状態。人によってはSurfaceペンでドローイングをしたり、画面上のソフトキーボードでの入力で重宝することだろう。ボディの薄さをほとんど犠牲にせずにこの機構を組み込んだのも素晴らしいデザインの仕事だと思う。
ただ、この無段階の角度調整と、後で触れる画面の大きさの変更は、Surfaceのカメラの仕様を変えてしまった。これまでのSurfaceはキックスタンドで本体を立てた状態で、目の前のあるホワイトボードなどがとれるように少し斜め向きについていた。
一方、Surface Pro 3ではカメラが正面向きになった。ただし、本体を少し傾ければ、これまで通り板書の撮影もできるし、そもそもこれまでのカメラも、結局、手動で角度調整しなければきれいに板書が撮れなかったことを考えると、むしろ、普通にカメラとして使ったときに方向をつかみやすいSurface Pro 3の仕様のほうがユーザーメリットも大きいはずだ。ちなみにSurface Pro 2で、暗所でもきれいにSkypeビデオチャットができるように改良されただけあり、画質も良好だ。
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