AVアンプメーカー各社から「Dolby Atmos」対応機の発表や開発表明が相次いでいる。久しぶりに登場した新しいサラウンドフォーマットとあってか各製品とも気合いが入っているが、映画館でも普及し始めたばかりの“次世代サラウンドフォーマット”は、果たして一般家庭でどこまで実力を発揮できるのだろうか。対応AVアンプ「SC-LX58」を発表したパイオニアに聞いた。
「Dolby Atmos」(ドルビーアトモス)の特徴は、高さ方向を含む立体的な音響空間だ。こう書くと従来のサラウンドフォーマットやDSP処理とあまり変わらないように感じるかもしれないが、今回はオーバーヘッドスピーカー(あるいはトップスピーカー)と呼ばれる“天井スピーカー”を物理的に配置する点が大きく異なる。理想のドーム型音場を形成できるようになるという。
Dolby Atmosのサウンドトラックには、2層のレイヤー構造とオブジェクト指向の手法が用いられた。まずベース層には従来のチャンネルベースの手法を組み合わせ、あまり動きのない環境音を収録する。上位レイヤーには動きのある音響要素をオブジェクトとして収録し、その要素が“どのように振る舞うか”を位置情報および時間情報のメタデータとして記述する。映画制作者は、スクリーンの映像に連動するように音を配置し、自在に動かすことができる。
映画館におけるDolby Atmosの音場空間は高く評価され、2012年に最初のDolby Atmos対応劇場がオープンして以来、全世界で増加中。対応する映画も60タイトルを超えた。「AVアンプメーカーにとっては、Dolby True HDやDTS-HD Master Audio以来の本格的フォーマットですから、期待しています」(平塚氏)というのも頷ける。
では、家庭用のDolby Atmosは劇場とどう違うのか。
天井にスピーカーを設置するというハードル
平塚氏によると、劇場用とホームシアター用の違いは「最大のスピーカー数が異なるだけ。基本的には同じです」という。劇場では最大64個のスピーカーを駆動できるが、民生用では最大34個。どちらも従来と同じ9.1chや7.1chにグループ分けして利用するため、単純に大きな劇場向けの冗長性を省いただけといえる。
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