最近、叱り方が分からない、という“上司”が増えているように感じる。先日、リーダー研修でこんな相談を受けたのだが、皆さんはどう思うだろうか。
上司A: 新入社員が日報に「毎日ヒマで、いかに眠らないようにするかが最大の課題です(笑)」と書いてきたんだけど、こういう場合、どうすればいいんでしょう?
筆者: はっきりと注意すればいいじゃないですか?
上司A: えぇーっ、言っていいんですかね? 言い方が分からなくて。
「上司なのだから叱ればいいじゃないか」と思うかもしれないが、ことはそう単純ではない。「厳しく言うとその後どうなるか不安」という上司やリーダーが増えているのだ。だから、「若手がとんでもないことを言っても、“面白いことを言うなぁ。若い人ってそんなもんかなぁ”と見逃してしまう」と話す人もいる。
確かに人を叱るのは面倒だ。叱られていい気分になる人はいないし、叱る側にも勇気がいる。“叱ること自体が苦痛”な人には、上司というのは“ツラい”立場に思えることだろう。しかし、そこを避けていたら部下は育たないし、組織にとってもよいことはない。
「バカヤロー!」に効果はある?
では、単純に叱ればいいかというと、そうとも言えないところが難しい。「昔は怒鳴られて覚えたものだ」「頭を小突かれたこともある」という経験を持つ世代にとっては歯がゆいかもしれない。「若手の育成スキル」をテーマにしたセミナーで、50代の部長からこんな質問を受けたこともある。
上司B: さっき、褒め方とか叱り方の“テクニック”を教えてもらったけれど、率直にただ一言“バカヤロー”って言っちゃダメなんですかね?
筆者: どうしてそのようにお考えになるのですか?
上司B: ボクたちが入社したころは、上司からしょっちゅう“バカヤロー”とか“明日から出社しなくていい”って怒鳴られたもんでしたよ。言葉はきついけど、問題について真剣に考えて、心から反省したし、今にして思えばありがたい言葉だったとも思うわけです。
確かに、怒鳴られれば「ドキッとさせる」効果はあるだろう。マズい、ヤバいと部下や後輩が感じるという面もあるには違いない。実際に彼も「ビビッて事の重大さを知ったり、二度とやらないようにしようと気を引き締めたりするもんじゃないかと思う」と言っていた。しかし、これでは“逆効果”になる場合がある。
「言い方」が悪ければ、話は通らない
「若手には、内容以前に“言い方”が引っ掛かってしまうんですよね」
これは以前、リーダー研修で1人のリーダーが語ってくれた話だ。若手が上司に叱られた後、若手だけが集まり「あの“言い方”はないよねぇ」「あれはヒドイ“言い方”だ」とグチっていたという。上司の言い方に反発を感じてしまい、肝心の伝えたい中身がまったく理解されていなかったらしい。
声を荒げたり、キツイ言葉を使ったりすると、相手は確かに“恐れ入る”だろうが、それは、声や言葉に反応しているだけで、内容を真摯に受け止めているわけではないのだ。相手が心底納得しなければ、行動を変えるのは難しい。そうなれば、上司はまた怒鳴るハメになるという悪循環に陥ることもあり得る。
「バカヤロー!」なんて怒鳴る時代ではない。かといって何も言わないのもダメ。ではどうすればいいのだろうか。
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