モアレは見られるが、ディテール描写力は圧巻
ニコンから新しいフルサイズ一眼「D810」が登場した。2012年に発売された「D800/D800E」の基本デザインを継承しつつ、撮像素子や処理エンジン、内部機構を一新したモデルである。特に注目したいのは、光学ローパスレス仕様となった新開発フルサイズCMOSセンサーだ。画素数は、現行の35ミリフルサイズ一眼レフでは最多となる有効3635万画素を誇り、常用感度はISO64〜12800に対応する。この新センサーでどんな写真が撮れるのか、まずは奥多摩湖近辺をスナップしてみた。
上の写真は、北氷川橋から見下ろした日原川の眺めだ。50ミリの標準レンズを使用し、絞りをF8まで絞り込むことで、手前から奥までを被写界深度内に入れて撮影した。PCのディスプレイ上で等倍表示にすれば、画面四隅までくっきりと解像していることが分かるはず。肉眼では確認できない、遠景の小さな枝や葉っぱまできちんと描写しているのは気持ちよく感じる。撮ったままのJPEGデータでここまで写れば不満はない。
既存のD800/D800Eは、モアレや偽色を軽減するための光学ローパスフィルターを組み込んだモデル(D800)と、光学ローパスフィルターを搭載しながら、その働きをキャンセルすることで、より鮮鋭感を高めたモデル(D800E)の2台に分かれていた。この2台の画質や価格にはそれなりの違いがあり、どちらを選ぶべきか悩んだ人も少なくなかっただろう。
だが今回のD810は、光学ローパスフィルター非搭載のモデルのみとなる。個人的には、多少のモアレや偽色よりも解像感の高さを優先したいので、これはありがたい変更だ。購入時の迷いもなくなった。その代わり、シーンによって多少のモアレが生じる場合がある。
上の写真は、同じく北氷川橋からの眺めを50ミリレンズで捉えたもの。工場マニアにはおなじみの物件だが、ローパスレスのカメラにとっては厳しい被写体でもある。写真の細部をチェックすれば、工場の外壁部分のところどころにモアレが生じ、実際にはない色である紫や黄色のしま模様が見られる。
個人的にはこれくらいは気にしないが、もし気になる場合は、RAW現像ソフトやレタッチソフトでモアレを補正すればいい。下の写真は、D810と同時発表になった同社の新しいRAW現像ソフト「Capture NX-D」を使って現像したもの。「なし/低/標準/高」の4段階から選べる「色モアレリダクション」の設定を「高」にし、それ以外の設定はデフォルトのまま出力した。完ぺきな除去とはいえないが、目立たないように低減されたことが分かるだろう。
なお、ここではあえてモアレが生じたカットを取り上げたが、一般的な撮影用途では、あまり神経質になる必要はないと思う。たとえば同じ工場を写した場合でも、下のカットではモアレはほとんど確認できないし、それ以外でも今回の撮影で特に不都合を覚えることはなかった。それよりも、遠景のディテールをシャープに描く解像感の高さに惚れ惚れするような魅力を感じた。
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