著者プロフィール:工藤友資
プログラマー、会社経営、ライターを兼業。人工知能の研究開発をライフワークとしている。Webサービス「BlogPet」を企画開発。2004年「BlogPet」にて「Internet magazine」のウェブサービスアワード ブログ関連サービス部門で最優秀賞を受賞。ガジェットオタクにしてマイナーOSマニア。
2014年6月、ソフトバンクから「Pepper」と呼ばれるパーソナルロボットが発表された。「SFじゃない。」を売り文句に、人の感情を“理解”するロボットとして注目を浴びている。2015年2月に発売予定とのことで待ち遠しい。ついに一般家庭にロボットが導入される時代になったのだ。どんな未来が待っているのか、想像するだけでワクワクする。
Pepperは胸部にiPadのようなタブレットを備えた人型ロボットだ。身長は約121センチと、小学校低学年くらいの子どもをイメージしてもらえればよい。技術の詳細は明らかにされていないが、状況を自分で判断して動くことができ、感情認識機能も持っているという。今後、Pepperの人工知能にもさらに注目が集まるはずだ。
人工知能、というとこうした最先端技術を想像する人が多いと思うが、人工知能は今や、われわれの生活に欠かせない身近な存在である。例えば、インターネットの検索機能。よく調べる言葉などの検索履歴から、年齢や性別を推測し、各ユーザーに最適な結果を提示する。
コンビニのPOS(販売時点情報管理)も人工知能といってよい。売り上げ、天気、気温などさまざまな条件に合わせて、各々の商品をどれだけ補充するか。人間が行えば途方もない作業だが、機械ならば瞬時に判断してくれるのだ。本連載では、こうした人工知能が生活にどのように関わっているのかを紹介していく。今回はまず、話題となった人型ロボット「Pepper」の人工知能を取り上げる。
ロボットに感情認識は可能か?
ロボットと言っても、用途や目的によっていろいろなものがあるが、Pepperは人間と言葉でコミュニケーションを取ることに特化したロボットである。記者発表会のときに、孫正義社長と会話をした場面が印象に残った人も多いと思うが、これは2014年現在、特段珍しい技術ではない。
クオリティはピンからキリまであるが、音声認識や合成をするロボットはたくさんあるのだ。シャープのロボット掃除機「COCOROBO(参照リンク)」でさえ簡単なものではあるが、音声によるやりとりができる。とはいえ、Pepperは現段階でもかなりよくできたほうだと言える。少なくとも発表会では、孫氏の言葉を理解し、自然に会話しているように見えた(“仕込み”の部分もあるかもしれないが)。
それよりも気になるのは、感情認識機能だ。同社のプレスリリースでは「人の表情と声のトーンを分析して人の感情を推定する感情認識機能を搭載」(参照リンク)、公式サイトには「あなたが悲しんでいるときに励ましてくれたり、あなたがうれしいときに一緒に喜んでくれたり、そんな存在になれることを目指しています」とあるが、その情報のほかはまったく公開されていない。
人間でさえ相手の感情を汲み取るのは大変難しい。本当にユーザーの感情を正確に汲み取ってアクションするのなら、これは画期的な技術である。「感情認識機能を搭載した」とうたうロボットはおそらくこれが初めて。ということで、感情認識機能の仕組みについて同社広報に問い合わせてみたが、「ソフトバンクとALDEBARAN Robotics SAS(以下、アルデバラン)の共同開発によるもの」という回答のみだった。一体、Pepperはどのようにして相手の感情を読み取るのだろうか。
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