ボイジャーは7月1日、「池澤夏樹×ボイジャー 電子出版プロジェクト」に関する記者発表会を開催。同社の提供する電子出版サービス「Romancer」の正式版リリースと、Romancerで作成した作家・池澤夏樹さんの著書『クジラが見る夢』と『静かな大地』の配信開始を発表した(ボイジャーの電子書店『BinB store』で7月1日から先行発売。他の電子書店では7月10日発売予定)。
Romancerは、Wordやテキスト、PDFなどのデータ、あるいはRomancer上のビジュアルエディタで入力したものからEPUB 3データを生成し、Romancer上に公開できるWebサービス(EPUBデータのダウンロードも可能)。
EPUB 3に変換できる無料のサービスとしては、例えばJEPA電子出版アワード2013の大賞を受賞した「でんでんコンバーター」などがある。Romancerはボイジャーのブラウザビューワ「BinB」を組み込み、PublishしたものをRomancer上で公開できるほか、執筆や販売といった出版プロセスを広くサポートしたプラットフォームのように機能している。
出版に必要となる基本的な機能は無料で利用できるが、有料で編集や校正、公開後の販売などのサポート、オンデマンド印刷、Google Analyticsコードの埋め込みなどが行える。
Romancerのリリースによって船出を迎えたボイジャー
「ようやく出版社として船を漕ぎだせる」——ボイジャーの代表取締役社長・鎌田純子さんは、今の気持ちをそう語る。
ボイジャーが現在提供しているサービスは、「azur(アジュール)」という青空文庫用の縦書きブラウザや、上述したブラウザビューワBinBなど、どちらかといえば読み手の読書環境を整備しようとするものが中心だが、今回、Romancerという書き手側をサポートするためのサービスをリリースしたことで、読み手・書き手どちらにもサービスを提供する体制が整ったことになる。
また、『クジラの見る夢』『静かな大地』の作者・池澤夏樹さんも登壇。今回Romancerを使い、作品の配信を開始した池澤さんは、今まで電子化の話をすべて断ってきたというが、こうして電子書籍の配信を行った理由を「ボイジャーはコストや印税率などについて、明確なモデルを提示してくれたため」と語る。配信作品は、池澤さんの作品の著作権管理や企画・編集を行うイクスタンとボイジャーの協力により制作され(レーベル名は「impala-ebooks」)、2015年7月までに34作品の配信を予定している。
ボイジャーは今後もRomancerなどのサービスを通じてインディーズを含めた多くの作家と連携し、活動を支援する出版社を目指していくという。
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