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光回線参入のスタンス/新料金プランの賛否/株主からの要望――3キャリアの株主総会を振り返る

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 6月18日のKDDIを皮切りに、19日にはNTTドコモが、20日にはソフトバンクが株主総会を開催した。株主総会は、議案を承認する場であるのと同時に、株主が前期の業績や今期の見通しを確認し、経営方針に承認を与える役割も持つ。今回はプレゼンテーションや質疑応答を通じて明らかになった、3社のニュースやそれぞれの経営方針をまとめていきたい。また、株主ならではの独特な視点から繰り出される質問に、各社の経営陣がどのように答えていたのかも合わせて紹介していく。

光回線への参入を正式表明したドコモ、KDDIは猛反発

 ドコモの代表取締役社長 加藤薫氏は、株主総会で「光サービスの卸でモバイルと固定の融合を実現したい」と語った。これは、NTTが開始する光回線の卸売りである「光コラボレーションモデル」の開始を受けての施策。NTT東西の光ファイバーを卸としてさまざまな事業者に提供し、回線を借りた各社が独自のブランドでユーザーにサービスを提供する仕組みのこと。加藤氏は、夏モデルの発表会でも光コラボレーションモデルの利用に前向きな意向を示していたが、株主総会では一歩踏み込んだ発言をした格好だ。

photo議長として株主総会を進行した加藤社長。

 株主からの質問に答える形で、加藤氏は「光ファイバーとの連携も含めた新しいサービスを考えていきたい」「無線だけでなく、光ファイバーを中心とするICTを、お客様にワンストップで提供し、いわゆるICTブロードバンド環境をお届けする役割を担っていきたい」とも付け加え、モバイルと固定回線をセットで提供するサービスの提供はほぼ決定したと考えられる。

photoNTTの光コラボレーションモデル。さまざまな産業に回線を卸すことで、光回線の活用の幅を広げるのが狙いだ

 KDDIは自社の光回線や提携事業者の回線をセットで申し込むことで割引が適用される「auスマートバリュー」を提供しており、ユーザーの支持を集めている。加藤社長のコメントからは“割引”まで行うかどうかまでは分からなかったが、ドコモ回線とドコモブランドの固定通信をセットで契約すれば、何らかのメリットがあることは間違いないだろう。サービスレイヤーでの連携も、視野に入れているようだ。すでに「docomo ID」はオープン化を進めており、デバイスを選ばず利用できるサービスも多くなった。

photoKDDIのauスマートバリューは、好調に契約数を伸ばしている

 これに対して、auスマートバリューを提供中のKDDIは、株主総会で光コラボレーションモデルに対して猛反発。代表取締役社長 田中孝司氏は「卸取引そのものが、3つの点で問題があると認識している」と語った。1つ目は、競争環境がなし崩し的に変わってしまうという点だ。

 「これまでは『接続』という概念で、他の事業者が借りる場合は8分岐ごとに貸し出していた。こういった(光コラボレーションモデルのような)卸取引は、これまで整備されてきた公平競争ルールを逸脱するのではないか」

photo田中氏は、株主からの質問に答える形で、NTTの光コラボレーションモデルに猛反発した

 2点目は、設備の敷設による競争が阻害されてしまう恐れがあるというものだ。

 「NTTは72%のマーケットシェアを持っている。一方で我々やケイ・オプティコム、その他電力系事業者がいて、設備を実際に作ることで競争をしてきた。卸取引は設備競争という観点から見ると、将来の独占につながり、重大な悪影響を与える」

 3点目は固定、モバイルなどに分割されたNTTが再度一体化する恐れがあるという指摘だ。形式上、別の会社で提供されているインフラだが、ドコモが窓口になってすべてを取り扱うとなれば、事実上1つの会社として運営しているのに近いと見る向きもある。結果として、もともとシェアの高かったNTT東西がさらに力を持ち、ほぼ独占になってしまうというのが田中氏の懸念である。

 「ただでさえ72%のマーケットシェアを持っている巨大なNTTが、ほかの事業者に対しても価格を自由に設定できる卸取引を始めると、シェアが一気に100%近くまで伸びる。我々やほかの事業者のシェアを食って、現実的な再統合や一体化につながる。これは非常に問題。卸提供が黙認され、公正競争が阻害されないよう、必要な措置の対応を総務省に要望していきたい」

 自前で光回線を敷設していることもあり、光コラボレーションモデルに猛反発するKDDIだが、ソフトバンクは静観の構えだ。現時点では「詳細な条件が分からないのでコメントを控えたい」(広報部)とのことだが、もともと1分岐からの接続を要求していただけに、他社と条件がそろえばドコモと同様、回線を借りてセット販売に乗り出す可能性はある。それぞれの立場が異なることもあり、非NTTグループで、足並みがそろっていないのが現状といえるだろう。

 なお、ソフトバンクは、すでにフレッツ光と自社のISPをセットにした販売を代理店として行っている。これについて株主に拡大の意向があるかを問われた代表取締役兼CEO 孫正義氏は、次のように語っている。

 「地域ごとに準備ができているところと、できていないところがある。単独ではなく、現在はNTTさんの光回線を業務提携の形で、ISPとくっつけて提供しているため、単独で広げられるものではない。相手と我々のスケジュールがマッチして、初めて提供できる。できるだけ分かりやすく、広げていけるように努力したい」

photoソフトバンクの孫氏。株主総会には「感情を理解する」という同社のロボット「Pepper」も登場

 一方で、光コラボレーションモデルについての踏み込んだコメントまでは出していない。モバイルが中心の通信事業者が固定回線までセットで提供する動きがにわかに活発化しているだけに、ソフトバンクの動向にも注目しておきたい。

新料金プランが好スタート、株主からは「高い」の声も

 「昨日(6月18日)時点で、365万契約」(加藤氏)と、好調なスタートダッシュを切ったドコモの新料金プラン。話題性が高かっただけに、ドコモの株主総会ではこれに関する質問も相次いで飛び出した。ある株主は「今までにないプランで白い犬(ソフトバンク)に散々やられてきただけのことはあって、そこにないものがあって非常にいい」と評価する一方で、「通話が少ない人にとっては、大幅な値上げになってしまう」と指摘した。新料金プランは、スマートフォンだと基本使用料が2700円(税別、以下同)。従来の「タイプXi にねん」が743円だったことを考えると、2000円に近い値上げになっている。

photoドコモの新料金プランの概要

 これについて、ドコモの代表取締役副社長 吉澤和弘氏は、新料金プランの狙いを次のように語っている。

 「音声通話は、コミュニケーションの基本中の基本と考えている。(ユーザーが)音声を使わなくなっているのは、SkypeやLINEの影響もある。それは、音声通話の料金が少し高いから、そちらで済まそうと抑制効果が働いていたから。(新料金プランは)時間を気にせず、どこに対しても無料でかけられ、コミュニケーションを楽しめる。抑制を外すことが音声の新プラン」

 スマートフォンでOTT(オーバー・ザ・トップ)のサービスに流れてしまった音声通話を取り戻したいという狙いが、新料金プランにはあるようだ。ただし、株主が指摘したように、ほぼ着信専用で持ちたいというニーズもある。こうしたユーザーに対しては、吉澤氏は「フィーチャーフォンの現在のプランはそのまま残しているので、そちらをお使いいただければ」と話す。iモードケータイ用の料金プランは残るため、そちらを勧めていくというわけだ。また、既存ユーザーはプランを変更しなければ、そのまま使うこともできる。

photo音声コミュニケーションの促進といった、新料金プランの狙いも語られた

 株主からは「現在の音声ARPUは1400円(正確には14年3月で1370円、月々サポートのマイナスを除くと約1800円)程度で、見せ方を工夫すればそこまで高く見えなかったのでは」という意見もあった。確かに、基本使用料と通話料を合計して1ユーザーあたりの平均を求めたARPUが約1800円であれば、900円の追加で料金を心配せずに通話が使えると考えることもできる。

 基本使用料とは別に、オプションとして通話定額を用意することも不可能ではなかったはずだが、吉澤氏は「料金プランをシンプルに見せたかった」と狙いを語っている。「基本使用料+音声定額というふうに分けることも可能だったが、分割すると複雑になってしまう。完全定額2700円とはっきり申し上げたかった」

 ただし、株主の質問のとおり、安い基本使用料でネットを中心に使う選択肢がなくなってしまうことは事実で、ドコモ側の回答はややかみ合っていない印象も受けた。現在は通話のヘビーユーザーが移行している段階。通話のヘビーユーザーが一通り移行したあとで、何らかの対策が発表される可能性もある。音声プランを提供するMVNOへの流出も増えるかもしれない。もっとも、ドコモ回線を利用するMVNOへの転出であれば、ドコモの回線数は変わらず、間接的には収益にもプラスに働く。MVNOをサブブランドとして有効活用するというのも、方策の1つといえるだろう。

 新料金プランは音声定額に加えて、2台目以降の端末や家族と通信量/料を分け合える「パケあえる」も売りの1つだ。1回線目(親回線)でパケットパックを契約しておけば、2回線目は基本使用料と月額500円のシェアオプションだけで契約することができる。この効果は、6月10日に発売されたiPadの販売に効果が出ているという。ドコモのiPadについては、代表取締役副社長 岩崎文夫氏が次のように述べている。

 「iPadには2種類のタイプがある(iPad AirとiPad mini with Retinaディスプレイのこと)が、どちらかというと大きい方(iPad Air)が少し売れ行きがいい。数は申し上げられないが、売れ行きは非常に好調。Androidのタブレットに上乗せする形で、iPadが売れている。2台目のタブレットが新料金でお安く使えるようになったことも、背景にあると思う」

photoiPadは、どちらかいうと9.7インチのiPad Airが好調とのこと。新料金プランとのシナジー効果も出ているようだ

 一部、改善を求める声はあったが、「ソフトバンクのCMに押されている」や「iPhoneをなぜ入れないのか」といった厳しい質問が相次いだ例年に比べ、全体的にドコモを応援する印象も強かった2014年の株主総会。iPhoneの導入や新料金プラン、VoLTEの開始といった攻めの姿勢は、株主からも評価されていたようだ。

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