米国の大手PLMベンダーであるPTCは2014年6月15〜18日(現地時間)、米国マサチューセッツ州ボストンにおいてユーザーカンファレンス「PTC Live Global 2014」を開催(関連記事:IoTがもたらす“月の陰”でもつながる価値——「戦略転換が必要」とPTC社長)。基調講演では、新たに買収によりPTCグループに入った米ThingWorx社長のラス・ファデル(Russ Fadel)氏が登壇し、IoT(モノのインターネット)時代が到来する中、同社の強みについて訴えた。
PTCは2013年12月にThingWorxの買収を発表(関連記事:PTC、「モノのインターネット」向けアプリプラットフォーム開発企業を買収)。IoT市場への本格的な参入を明らかにしている。今回のPTC Live Global 2014はThingworx買収後初めてIoTに関連する戦略の全体像を訴える場として注目を集めていた。その中で基調講演に登壇したファデル氏はIoTの可能性とともに「IoTを本格化させるにはアプリケーションが足りない」と強調した。
ThingWorxは2009年に創業。創業の理念はとにかく“IoTプラットフォームにより開発を簡単にしたい”ということだったという。
「インターネット接続デバイスの普及が2010年に70億台だったのが、2020年には500億台、さらに2035年には1兆台に達するといわれている。しかし、IoTを活用するにはさまざまなアプリケーションが必要になる。誰もそのアプリケーションの重要性には触れていなかった。例えば500億台のデバイスが普及した時に必要なアプリケーションは500万個で、1兆台の場合は1億個だ。IoTの普及にはアプリケーション開発が足りず、この開発を容易にする必要があると考えた」とファデル氏は語る。
IoT開発期間を低減しイノベーションを誘発
そこで、IoTアプリケーションの開発基盤として、アプリ開発を簡単に行えるようにしたのがThingWorxだ。IoTではまず、センサーデバイスから得たデータをネットワークを介して通信し収集することになる。しかし、アプリケーションの開発ツールは一般的なものしかなく、それぞれを修正しながら使っているという状況が多かった。これらの開発ツールはIoTに最適化されているわけではないので、開発工数が増え、それに伴い開発期間や開発コストが掛かり、IoTへの取り組みが限定される要因になっていた。これらをIoTに最適化された開発基盤とすることで、開発のコストを下げ、IoTへの参入を容易にしたことが特徴だ。
またシステム開発にはモデルベース開発を利用しており、開発期間は従来に比べ「10分の1に短縮することが可能だ」とファデル氏は語る。実際に小規模のものであれば最短で3週間程度でIoTを活用可能としたケースもあるという。
「開発期間やコストを大幅に低減できるということは大きな価値を持つ。まず市場のニーズに応じた製品を素早く提供できるようになる他、開発コストが限りなくゼロに近づけば、アイデアをそのまま具現化できるのでイノベーションをより多く起こせるようになる」とファデル氏は語っている。
また製造業で導入するには2つのアプローチがあるとファデル氏は指摘する。「1つは現在の製造業の機器を“つなぐ”ことでオペレ—ションを改善するアプローチ、もう1つは製品にIoTを組み込むことで新たなビジネスモデルを創出するというアプローチだ」とファデル氏は語っている。
ThingWorx 5.0をリリース
また、新たに2014年6月16日(米国時間)には、新バージョンである「ThingWorx Platform v5.0」もリリース。ThingWorxサーバ連携機能により、クラウド、オンプレミス、ハイブリッドや、オンデバイスでの展開が可能となった他、効率的な通信プロトコル「AlwaysOn プロトコル」などを採用している点が特徴だという。
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