ヤマハは7月11日、約6年ぶりとなるHi-Fiコンポーネントの新製品「S3000シリーズ」を発表した。ヤマハ設立125周年という節目を迎え、「音と音楽の会社として、“聴く”という形で音楽表現の理想を追求したシリーズ」。価格はプリメインアンプの「A-S3000」が45万1500円、USB-DAC搭載のCDプレーヤー「CD-S3000」が49万3500円。どちらも9月上旬に発売する。
「A~S3000」は、ヤマハの特許技術である「フローティング&バランス増幅」を採用した全段フルディスクリート構成のプリメインアンプだ。そのポテンシャルを最大限に発揮するため、一般的なバイポーラ型トランジスターに代え、新たにMOS-FET出力素子を採用し、カスタムメイドの大型トロイダル電源トランスと組み合わせた。狙いは、「プラス側とマイナス側で同一極性のMOS-FETを使うことにより、フローティング&バランスパワーアンプだけの特長である“極性の違いによる音質差をなくした完全対称設計”をさらに進化させる」(同社)こと。また、S/Nに優れた音場感の高いサウンドに、MOS-FETが持つ真空管アンプのような温かみのある音質傾向をプラスしたという。
外観は、オーソドックスな直線的デザイン。いかにも剛性の高そうなシャーシから同社製グランドピアノと同じ処理で仕上げたというサイドウッドまで、「表面には一切のネジが見えない作り」になっている。約7ミリの厚さを持つアルミフロントパネルは、シルバーヘアライン仕上げ。その中央には大型の2連アナログメーターを備え、音楽の躍動感を表現するという。
回路の設計コンセプトは「徹底したローインピーダンス設計とノイズの極小化」。シャーシは2重構造で、2ミリ厚の鋼板に銅メッキを施したインナーフレームに主要パーツを収容している。配線はすべてボトム側に通して信号経路を最短化し、結線にはんだなどは使用せず、すべてネジどめとしてローインピーダンス設計を徹底。電源トランスも巻き線そのものを直接取り出して接続端子にネジ止め結線した。
さらにフォノイコライザーやMCヘッドアンプ、ヘッドフォンアンプなどのアクセサリー回路もすべてディスクリート構成というぜいたくな作り。ボリュームコントロールにはラダー抵抗のみで構成される新日本無線製のボリューム素子を採用するなど細部までこだわった。音声入力は、2つのXLRを含む8系統。XLR端子は切替式で3番ホットのタイプにも対応する。
本体サイズは435(幅)×180(高さ)×464(奥行き)ミリ。重量は24.6キログラム。
DSD 5.6MHzまで対応するUSB-DAC機能も——「CD-S3000」
一方のCD-S3000は、高級CDプレーヤーにハイレゾ音源再生対応のUSB-DAC機能を組み合わせた構成。もちろんA-S3000とバランス接続すれば、信号の伝達から増幅までフルバランス動作となる。
CDドライブは、独自のローダーメカに鋳鉄製のアンカーを追加して制振性と信号読み取り精度を向上させた新開発「オプティマイズド・ハイプレシジョン・リジッド CDメカニズム」。外部からの振動を防ぎつつ、ネジを使った調整機能を両立するため、前方のアンカーは上下二層構造とした。
シャーシ内部はデジタル部とアナログ部を完全にセパレートし、それぞれに専用のトロイダルトランスを配置。電源部もブロックケミコンを基板上に直接マウントすることで給電ロスをなくす。さらにフルディスクリート構成のアナログオーディオ回路や1段構成のI/V変換回路を採用したバランス出力部などにより情報ロスを低減。伸びやかで開放感のある音を実現したという。
DACには、ESSの最新チップ「SABRE32 REFERENCE DAC」(ES9018)を採用。デバイス内でマスタークロックを生成することでジッターの影響を最小限に抑える。またUSB-DAC機能には、ヤマハ独自のIC「SSP2」を使用。最大192kHz/24bit再生に加え、ASIO2.3またはDoP方式でDSDファイル(5.6MHz)のネイティブ再生にも対応する。Windows向けにはASIO2.3準拠の専用ドライバーソフトを同社サイトで公開する予定だ。
音声出力は、光および同軸のデジタル出力に加え、バランス(XLR)とRCAを用意している。本体サイズは435(幅)×142(高さ)×440(奥行き)ミリ。重量は19.2キログラム。
S3000シリーズは、8月1日から予約受付を開始する予定。なお、CD-S3000は3年間、A-S3000は5年間の長期製品保証が付与される。
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