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気温40度でも問題なし、アラブの砂漠にエネルギー都市

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yh20140604masdar_map_250px.jpg図1 アラブ首長国連邦とマスダールシティの位置

 アラブ首長国連邦(UAE)は7つの首長国からなる中東の国だ(図1)。国土はアラビア半島の東側にあり、ペルシャ湾を抱くように広がっている。日本にとってはサウジアラビアに次ぐ原油の供給源であり、2012年には4600万kL以上の原油を輸入している。これは日本の全輸入量の22%にも達する(関連記事)。

 アラブ首長国連邦=原油、というイメージが強かったため、同連邦内最大の国、アブダビが2006年に「マスダールシティ」と呼ばれる未来の都市プロジェクトを打ち出したときにはかなりの驚きをもって迎えられた(図2)。

yh20140604masdar_city_590px.jpg図2 マスダールシティのマスタープラン。シティの全景を北方から見下ろした絵。左下はアブダビ国際空港(クリックで拡大) 出典:アブダビMasdar

 マスダールシティは、太陽光や太陽熱、風力、地熱などの再生可能エネルギーを利用し、二酸化炭素を排出しないゼロカーボンの未来都市として計画された*1)。現在でいうゼロエネルギー都市の先鋒である。化石燃料に依存しないだけではない。海水から再生可能エネルギーを使って淡水を得、廃棄物もゼロにすることを目指した。

 規模も大きい。都市建設のために最大220億米ドル(当時の換算レート116円で換算すると2兆5500億円)と、8年の歳月をかける計画だった。6.5km2の土地*2)を確保、住宅や公共施設の他に、商業施設やオフィスビルも配置するという壮大なもの。5万人が居住し、6万人が通勤する都市だ。日本人の感覚ではそれほど大きな都市と思えないが、同国首都アブダビの人口が2006年時点に60万人程度(2013年時点では90万人)だったことを考えるとかなりの規模だといえる。

*1) 国営の再生可能エネルギー事業会社として2006年に設立されたアブダビMasdar(マスダール)が建設する。同社は国内外で再生可能エネルギーに関する不動産開発事業やインフラ投資事業の他、再生可能エネルギー技術や教育にも投資している。
*2) アブダビは大部分のインフラが海岸線沿いに集中している。首都アブダビ市は周囲を「運河」で囲まれた東西約16kmの細長い島。島の西の端から15kmほど東にマスダールシティを建設する。マスダールシティのすぐ東側にはアブダビ国際空港が広がる。

鳴り物入りで始まったが……

 アブダビは連邦内で最大の経済規模を持つ。原油埋蔵・生産量でも連邦中トップだ。従って、2006年当時に再生可能エネルギーに傾倒する必然性はなかった。

 それにもかかわらずマスダールシティ建設に取り組んだ理由はさまざまだ。まず、化石燃料を使い続けることにはさまざまなリスクがある。地球温暖化はもちろん、石油の価格が長期的に上昇していくリスクも大きい。アブダビにとって価格上昇にはメリットもあるが、結果的に世界経済が縮小するなどのデメリットもある。

 当時既に一部の再生可能エネルギーには、化石燃料に取って代わるだけの潜在能力があることが分かっていた。そこでゼロカーボンを旗印として「石油後」の都市モデル、経済モデル作りにいち早く取り組んだ形だ。

 2008年に建設が始まった当初は計画通りに進んでいた。ところが、米国のサブプライムローンに端を発した世界同時不況の影響を受けてしまう。当初の8年間、4フェーズだった建設期間を、2010年時点で2025年まで延長。2009年に終わるはずだった第1フェーズは、2014年時点でまだ完成度が50%という段階にある。居住者の数は4万人に、通勤者の数は5万人に下方修正されている。

 建設が遅れるマスダールシティはどのような状態にあるのだろうか。荒れ地のままなのだろうか。そうではない。再生可能エネルギーの利用は進んでおり、中東の伝統的な省エネルギー手法なども取り込んでいる。

 オフィスビルなどの建設も進んでいる。ドイツSiemens(シーメンス)の中東本社ビルは2014年1月に完成した*3)。一般企業向けのテナントビルは第1棟が完成し、米GEと三菱重工業が入居している。マスダール科学技術研究所のキャンパスは最終的に6つのビルからなる。第1フェーズは既に建築が終わり稼働中、第2フェーズが建築中だ。

*3) LEED(Leadership in Energy and Environmental Design)のプラチナ認証を受けており、中東で最もエネルギー効率の高いビルだという。

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