著者プロフィール:松岡功(まつおか・いさお)
ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。
主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。現在、ITmedia エンタープライズで「Weekly Memo」を連載中。
ガートナージャパンの調査によると、日本における企業内SNSの利用企業数の割合はここ数年10%未満にとどまっており、普及に弾みがついていないようだ。FacebookやTwitterに代表されるSNSの特性を企業内で生かそうという製品やサービスも数多く出てきているのに、なぜ一般で使われているように広がらないのか。
ガートナージャパンが先頃開いたプライベートイベント「ガートナー ビジネス・インテリジェンス&情報活用サミット2014」の講演で、ガートナーリサーチ部門バイスプレジデントの志賀嘉津士氏による企業内SNSをめぐる話が興味深かったので、その内容をもとに課題と対策について考えてみたい。
企業内SNSの導入目的を見誤るなかれ
ガートナーの調査では、すでに企業内SNSを利用しているところに導入の目的も聞いている。それによると、「社員同士が組織の壁を越えて協業しやすくなる」「自分の部署・部門以外からも広く意見やアイデアを求める」という答えが多数を占めた。また、上記の2つとは大きく差があるものの「社員のビジネス成功体験や教訓を企業が再利用する」「社内の不特定多数に広く教えを請うたり意見を求める」という答えもあった。
志賀氏は、この回答から企業内SNSの停滞要因が浮かび上がってくるという。
「多数を占めた2つの回答は、いわばコラボレーション(情報の共有)を目的としている。しかし、企業にとってコラボレーションはあくまでもプロセスであり、そこからどんな新しい価値を生み出せるかが目的にならないといけない。その点、あとの2つの回答は新しい価値を生み出そうという姿勢が見えるが、少数にとどまっている。コラボレーションが目的になっているうちは、企業内SNSは定着しない」
この指摘は意外に盲点ではないだろうか。企業内SNSは「コラボレーション・ソフトウェア」のカテゴリーにも入っており、最大の特徴もつい「コラボレーション」と捉えてしまいがちだ。しかし、志賀氏が指摘するように、企業にとってコラボレーションはあくまでもプロセスであり、そこからどんな新しい価値を生み出せるかが目的であるべきだろう。
では、新しい価値をどう生み出せばいいのか。そこで必要なのがアナリティクス(分析)だ。企業内SNSにおいて社員が交わすトピックやアイデア、つながり方などの情報を収集、測定、分析し、その結果に解釈を与えることで、新しい価値を生み出す努力をするわけである。
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