新たな高速無線通信規格「WiGig」が、民生機器市場で急速に普及しそうだ。
WiGigはもともと、業界団体「Wireless Gigabit Alliance」の略語を示していたが、同団体は2013年にWi-Fi Allianceに統合されている(関連記事:60GHz帯通信の勢力図、Wi-Fi AllianceとWiGigの合併でどう変わる?)。WiGig規格は、数Gビット/秒のデータ伝送速度で無線通信を提供できる。
WiGig対応機器は、2.4GHz帯と5GHz帯、60GHz帯を利用する。最大データ伝送速度は7Gビット/秒と高速で、他のWi-Fi対応機器との互換性も維持することができる。しかしWiGigは、通信距離が最大で10m程度と短いことから、Wi-Fiの置き換えを狙うものではない。2014年中には、WiGig対応のチップを組み込んだ最初の機器が市場投入されるとみられ、約1Gビット/秒のデータ伝送速度を実現し、デバイス間におけるファイル共有を高速化できるようになる見込みだ。
今後、WiGig対応機器が量産されるようになれば、急速に普及していくかもしれない。米国の市場調査会社であるFrost&Sullivanの予測によると、WiGig対応機器の累計出荷台数は、2014年末までに120万台に、さらに2017年には15億台に達する見込みだという。
Wi-Fi Allianceは2013年9月、60GHz帯を利用するWiGig技術の認定プロセスを発表した(関連記事:USBとも連携——Wi-Fi Alliance、60GHz帯無線「WiGig」普及に全力)。これにより、Wi-Fi Allianceは、機器間の相互運用性が確認できたWiGig対応製品を「WiGig CERTIFIED」として認定していく予定だ。
Wi-Fi Allianceによると、WiGig CERTIFIED製品は、近距離のデバイス間において、数Gビットクラスのデータ伝送速度や、低遅延トラフィック、セキュリティ保護機能を備えたコネクティビティなどを実現できる見込みだという。さらに現在、新たなWiGig規格の開発も進んでいて、高精細ディスプレイ装置や周辺機器に向けて、近距離に対応した数Gビットクラスのコネクティビティを提供できるようになる他、入出力ケーブルの置き換えなど、さまざまな用途への適用が期待されている。
業界全体が確実にWiGigの導入へと向かっていることから、サプライチェーン全体においても今後、民生機器へのWiGig技術の適用が進んでいくとみられる。一例を挙げると、Cisco Systemsは最近、WiGig/IEEE802.11ad対応製品の量産を初めて実現したチップセットメーカーであるWilocityと共同で、60GHz帯を利用するエンタープライズネットワーク機器の開発を手掛けていることを発表している。データ伝送速度は5Gビット/秒を実現するという。この新製品は、超高速の屋内ネットワークの実現に向けてIEEE802.11ad規格をベースとしていることから、最終的にはWi-Fi AllianceによってWiGig CERTIFIED製品として認定されることになる見込みだ。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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