タブレットとスマートフォンの“Windows”は異なるが……
これまでMicrosoftのPC/タブレット向けOS「Windows 8/8.1」と、スマートフォン向けOS「Windows Phone」はプラットフォームが分離しており、開発者はそれぞれのターゲットに合わせて別々の形でアプリを開発する必要があった。さまざまなデバイスに同じアプリを提供したい場合、これが開発の負担になる。
同時に、同じ“Windows”の名称を冠しながら異なるプラットフォームが存在することは、Microsoftにとっても「盛り上がっているモバイルプラットフォームに、既存のWindowsでの蓄積を生かせない」というジレンマになっていた。
特に昨今は、一般ユーザー向けデバイスの主流がPCからスマートフォンおよびタブレットへと傾きつつある。ライバルのAndroidやiOSが1つのOSで複数のフォームファクタをカバーするのに対し、Microsoftでは「タブレットがWindows」「スマートフォンがWindows Phone」と別々の存在となっており、これがシェア拡大におけるネックの1つだった。
今年4月にMicrosoftが開催した開発者イベント「Build 2014」で発表した「Universal Windows Apps(ユニバーサルWindowsアプリ)」の概念は、こうした問題を解決する仕組みとして注目されている。
ついに実現されたアプリストアの統一
Microsoftがデバイスとクラウドを中心とした「One Microsoft」戦略を打ち出して1年近くが経過するが、これがようやく形となって実現しつつあるのが「Xbox One」と「Windows Phone 8.1」の登場だ。
以前よりWindows 8.1の開発コード名が「Blue」と呼ばれていたことは知られているが、Windows Phone 8.1でも同じ名称が用いられることがあり、BlueとはOne Microsoftを実現するためのキーファクタ的な位置付けにあると考えられる。
Blueにおける目標の1つは「Windowsストア」の統一だ。これまでWindows 8/8.1とWindows Phoneでばらばらだったアプリストアを一元化し、単一のパッケージで複数のプラットフォーム(フォームファクタ)をカバーする。
具体的にはスマートフォンからタブレット、デスクトップ、さらには大画面テレビを使ったゲーム機(!)まで、同じアプリ(ユニバーサルWindowsアプリ)が動作するというわけだ。
これはWindows Phone 8時代に一部実現されていたものの、当時はあくまで「同じリソースで開発したアプリをツールで出力する際、別々のパッケージに梱包(こんぽう)し直して別々のストアに登録する」という、ルーチン処理の簡略化に過ぎなかった。真の意味で統一が図られたのが、Windows Phone 8.1以降といえる。
さらにx86系統のプロセッサを搭載したXbox Oneの登場により、同ゲーム機の上でWindows 8/8.1向けに作成されたアプリを動作させることも可能になった。これがどの程度の意味を持つのかはまだ未知数の部分が大きいが、一方でまだまだ盛り上がりに欠けるWindowsストアをにぎやかにさせるのに貢献することも考えられ、今後に期待できる。
さて、あらゆるデバイス(フォームファクタ)をカバーする単一のアプリと簡単に表現してはみたものの、これが難しいのはアプリ開発者だけでなく、実際にAndroidやiOSでさまざまなデバイスを日々利用しているユーザーもある程度は認識しているはずだ。
まず単純にスクリーンサイズや解像度がフォームファクタによって大きく異なり、単一のアプリがこれらをすべてカバーしようと思ったなら、ユーザーインタフェースについて深く考慮しなければならず、場合によってはデバイスによって大きく異なるユーザーインタフェースを使い分ける必要が出てくる。
また、利用形態もスマートフォンとデスクトップ、ゲーム機では大きく異なり、それぞれを考慮する必要がある。ハードウェアに搭載されるセンサー類やプロセッサ/メモリも大きく異なるため、すべてのフォームファクタをカバーしようと思ったならば「最低構成に合わせる」あるいは「デバイスによって挙動を変えるように調整する」といった具合に工夫が必要になる。
Buildでは「4型から40型まで〜」といった名称のセッションも開催されていたが、アプリストアの統一で考えるべきことがさらに増えたといえるかもしれない。
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