パナソニックは2014年4月28日、2013年度の決算概要を発表した。2013年度の売上高は国内/海外合わせて7兆7365億円、営業利益は3051億円で、2012年度に比べて増収増益となった。純利益については1204億円と、3年ぶりの黒字を達成している。
売上高は、住宅および車載事業が好調だったものの、為替の影響を除くと、2012年度比では1916億円の減収となっている。アベノミクスによる円安の影響で円建ての売上高が積み上がり、最終的に4335億円の増加となった。
一方、営業利益では以前から進めてきた構造改革による固定費の圧縮が利き、2012年度比で1442億円増加している。
好調な滑り出しも、「今後は改善ペースは鈍る」
パナソニックにとって、2013年度は中期計画の1年目となる重要な年だった。同社は中期計画として、2015年度に営業利益3500億円、キャッシュフロー6000億円(3年間累計)という目標を掲げている。
社長の津賀一宏氏は、「2013年度は、赤字事業の止血など4つの重点項目に取り組んできた。事業計画そのものも、売り上げ成長に基づく積み上げ型ではなく、事業部自体の判断で作った計画を全社で進めてきた。この結果、四半期ごとに決算が順調に回るようになってきている。中期計画の1年目を終え、滑り出しは想定以上であると実感している」と強調する。
中期計画の2年目となる2014年度は、売上高7兆7500億円、営業利益3100億円を目指している。2013年度に3051億円の営業利益を達成したことで、「中期計画の営業利益目標を1年前倒しで達成できるのではないか」との声も聞かれた。津賀氏はこれには慎重な姿勢を示し、「2013年度は、特別経営施策(賞与減額など)、消費税の増税前の“駆け込み需要”などによって利益が積み上がった。これを差し引いて考えれば、2014年度の3100億円という数字は、やはり妥当だと考えている」と述べる。
財務体質の大幅な改善が目立った今回の決算発表だが、津賀氏は「構造改革は、かなり前倒しで進めてきた。まだネタがあるのかと問われると、あまり残っていないというのが正直なところ」と明かす(関連記事:パナソニックの半導体事業改革が完了)。「これまでに比べ改善ペースは鈍ってくるが、新しい知恵を出して利益の積み上げを図る。一刻も早く、大きな成長戦略に向けた投資ができる体制に戻ることを目指す」(同氏)。
2014年度の業績見通し
津賀氏は、2014年度の業績見通しの中で、「半数の事業で営業利益率5%を超えることを狙う」とコメントしている。
事業セグメントのうち、増益増収を見込んでいるのが液晶パネルなどを手掛ける「AVCネットワークス」と、車載関連を扱う「オートモーティブ&インダストリアルシステムズ」だ。
AVCネットワークスは、プラズマディスプレイ事業から撤退したことと、ディスプレイの用途をテレビから“非テレビ(タブレット端末、医療用ディスプレイなど)”へシフトさせるなど、比較的収益を上げやすいB to B製品を強化して増収増益を狙う(関連記事:テレビは「白モノ家電の1つ」——プラズマ撤退で津賀氏)。オートモーティブ&インダストリアルシステムズでは、「車載関連では期待以上の受注が取れている」(津賀氏)とし、「リチウムイオンバッテリを中心に、充電器などを1つの柱とする」と述べている。
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