前回に続き、4Kテレビの話だ。4月中旬にパナソニック、東芝、ソニーの3社が4Kテレビの新製品を発表した。このうち、筆者が新しい4Kレグザに注目している理由は「手が届く価格帯、サイズなのに全部入りの4K」という点である。
無論、テレビであり、映像ディスプレイであるからには画質の良し悪しもきちんと評価しなければならない。しかしながら、ここまで選択肢の幅が広く、また必要とされる機能がそろっている製品もなかなかない。順にポイントを追っていくことにしよう。
直下型LED、部分駆動バックライトの全面採用した”手頃サイズ”
レグザ「Z9X/J9X」シリーズは、84V型モデルを除き、直下型LEDでの部分駆動、すなわちローカルディミングに対応している。これだけならソニーのBRAVIA(ブラビア)「X9500B」シリーズが対応しており、パナソニックも年末に向けて直下型LEDバックライトモデルを用意することを明らかにしている。「Z9X/J9X」シリーズのポイントは、40V〜50V型という、日本の家庭でも導入しやすいサイズバリエーションを用意したことだ。
画面を細かく分割し、直下型LEDの輝度をうまく制御すると、液晶パネルの弱点を覆い隠すほどの効果を発揮する。地デジバブルやエコポイントバブルの時代にも直下型LEDとローカルディミングを搭載したモデルはあったが、当時と今では液晶パネルの素のコントラストが違う。VAパネルの高コントラスト化が進み、さらに映像分析やバックライト輝度調整、ゲイン補正などさまざまな進化の結果、以前よりもその効果は高くなっている。
一時期、フルHDテレビの価格相場が下がり、市場から姿を消していた直下型ローカルディミング対応モデルが、4Kトレンドで平均売価が上昇したため復活したのは喜ばしい。もっとも、4K化を背景にしたものだけに、これまでは大画面モデルが中心だった。4Kを選ぶ人が増えるといわれているのは60V型以上で、ラインアップ上も4Kテレビは55V型以上のモデルがメインだった。40V型の「40J9X」は、国外を見渡しても4Kテレビとしては珍しいサイズといえるだろう。
では「珍しい=意味がない」かというと、そんなことはない。画素密度というのは、結局のところ視聴位置から画面までの距離に依存する。つまり視聴位置がテレビに近いのであれば、パッと見でも4Kの利点は感じられるものだ。実際、J9Xは置く場所さえあるならば、一人暮らしのワンルームなどで高画質を楽しむのに適している。2メートル以内の視聴距離で「40J9X」を見慣れてしまうと、フルHDのテレビに戻ったときに強いメッシュ感を感じるようになると思う。
高画質なディスプレイ兼テレビが欲しい一人暮らし、あるいは自分の書斎向けに欲しいという方もいるのではないだろうか(ただしPCを接続する場合、HDMI 2.0に対応していなければならない。Mac Proも現在は非対応だ)。
もっとも、このお手頃サイズよりも商品として面白いと思っているモデルがある。それが50V型の「50Z9X」だ。
古い42V型の置きかえに使える50V型
これは東芝の製品に限った話ではないが、テレビの狭額縁化が進み、さらに全体が軽量化されたことで脚部設計の自由度も上がり、フレーム全体の構造もシンプル化している。これにより、かつて日本でもっとも多く売れていた42V型のテレビを、50V型のテレビで置きかえることが可能になった。
とりわけテレビと視聴位置が近いレイアウトの家庭にはピッタリだ。テレビを近くで見ると目が悪くなるという話が、僕らが小さい頃に拡がったが、実のところそんなことはない。4Kテレビは近くで見るほど(視野角が広く、すなわち大画面感が大きくなるほど)その良さが伝わる。
また、同じ直下型LEDのローカルディミング対応でも、JシリーズとZシリーズは異なり、Zシリーズの方がピーク輝度が高い。公式には輝度約75%アップと書かれており、メーカー側で明るさの絶対値が保証されているわけではない。しかしながら、およそ700nit程度の明るさを全画面で発揮できるという(『40J9X』は約500nit)。
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