ARMは、2014年第1四半期の決算を発表し、わずかながら期待外れの結果に終わったことを明らかにした。同社はその要因について、2013年12月のスマートフォン売上高が世界的に減少し、“在庫調整”が行われたためだとしている。
ARMが2014年4月23日に発表した決算報告書によると、売上高は、前年同期比で16%増となる3億520万米ドル(1億8670万ポンド、ポンドの場合は前年同期比で10%増)。税引き前利益は9710万ポンド。2013年第1四半期が前年同期比44%増だったのに対し、2014年第1四半期はわずか同9%増にとどまっている。
米国の市場調査会社であるIDC(International Data Corporation)によると、2013年全体の世界スマートフォン出荷台数は10億420万台と、初めて10億台を上回ったという。2012年の7億2530万台に比べて38.4%増加している。しかし、ARMの業績が予想に反して伸び悩んだことは、ARMの再販業者や半導体チップ設計ライセンシー(ライセンス利用者)にとって、在庫が売れ残り、2014年第1四半期の売上高が低迷する結果につながる。さらに、「スマートフォン向け市場が飽和状態に達し、今後は傾き始めるのではないか」とする懸念も生じているようだ。
これまで多くの携帯電話機メーカーが、ARMベースのチップを採用していることから、IntelはライバルであるARMに追い付こうともがいてきた。ここにきて、携帯電話機メーカーがARMからIntelへシフトし始めているという見方もある。
だが、Appleの「iPhone 5s」に搭載されているプロセッサ「A7」や、Qualcommの強力な新型プロセッサ「Snapdragon 808」「Snapdragon 810」は、いずれもARMをベースにしたものだ。
株式市場の情報サイトSeekingAlphaによると、「A7は優れた性能を実現し、瞬く間に成功を収めた。これにより、スマートフォン向けプロセッサ市場におけるARMの評価が高まり、2014年第1四半期中に26件ものライセンス供与契約を締結するに至った。このうち6件は、新規の顧客企業だ」という。
回復基調に向かう
スマートフォン市場の飽和を懸念する声はあるものの、同市場は今後も成長が期待できる分野であることに変わりはないようだ。IDCは以前に、2014年のスマートフォン市場の成長率を19%としていたが、それを上回る勢いで伸びるとみられる。ただし、IDCが2014年2月26日に発表したリポートによれば、スマートフォン市場は、2018年までには健全な成熟期に入り、売上高成長率が6.2%程度に縮小する見込みだという。
ARMのCFO(最高財務責任者)であるTim Score氏は、2014年4月23日に行われた記者会見の中で、「ARMのライセンス供与先であるTSMCは、ARMのロイヤリティ収入全体の半分以上を占めている。そのTSMCが、ドイツ銀行のアナリストに対し、2014年第2四半期に過去最高の売上高を達成できる見込みだと語っている。このことからも、スマートフォン市場が多くのアナリストの予測に反して力強く成長する可能性を秘めていることが分かる」と述べている。
Reuters(ロイター通信)によると、Score氏は、「スマートフォン市場では在庫調整が行われていたが、現在は落ち着きを取り戻しているようだ。TSMCが2014年第2四半期に力強い成長を見込んでいることから、当社としては同年第3四半期にロイヤリティ収入を期待できると考えている」と述べたという。
64ビットコア「Cortex-A57」も順調か
ZDNetによれば、ARMアーキテクチャは、市場に投入されているスマートフォンのうち約95%に、デジタルカメラでは約80%に採用されているという。ARMは、この他の市場への展開も進めている。AMDが以前に発表した、データセンター用サーバ向けプロセッサ「Opteron A1100」は、ARMの64ビットコア「Cortex-A57」をベースとしている。AMDは、Opteron A1100が2019年までに、同市場において1/4以上のシェアを獲得すると見込んでいる。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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