SAPジャパンは4月7日、東京と大阪の2拠点にクラウドデータセンター(DC)を開設したことを発表した。4月1日から稼働している。独SAPがアジア太平洋地域にDCを設置するのは初めて。
ドイツ、オランダ、米国に続き4カ国目となる日本DCでは、ミッションクリティカルな基幹業務アプリケーションのクラウドサービス「SAP HANA Enterprise Cloud」を提供。HANA Enterprise Cloudは、インメモリコンピューティング「SAP HANA」に対応した基幹業務システムの「SAP Business Suite」や「SAP NetWeaver Business Warehouse」などをペタバイト規模のマネージドクラウドサービスとして提供するもの。既に日本DCを利用するユーザー企業は5、6社いるという。今後は、SAP傘下の米SuccessFactorsの人事管理(HCM)クラウドサービスや、B2Bオンラインマーケットプレイスの米Aribaのサービスも日本DCから利用可能になる予定だ。
日本DCのサービスレベルは、SAPのほかのグローバルDCと同じ基準となる。SLA(サービス品質保証契約)はインフラストラクチャ、OS、データベース(DB)、HANA DB、アプリケーションをカバーし、99.7%以上の可用性を保証する。HANA DBのバックアップやモニタリング、リストア、インフラのイベント検知、OSのパッチなどのマネージドサービスも提供する。また、地震や津波など、日本特有の要件に合わせた災害対策も施されているという。
日本の重要性を本社も理解
なぜアジア太平洋の他地域に先駆けて、日本でDCを開設することになったのか。同日開かれた記者会見に登壇したSAP エグゼクティブ・ボード・メンバーで、プロダクト&イノベーション担当のビシャル・シッカ氏は、「今後アジア太平洋地域でのビジネスを広げていく際に、日本はその鍵を握るハブ拠点となる。新たなDCをスタートさせるには最適な場所だった」と説明する。
また、SAPジャパンの安斎富太郎社長は「市場規模の大きさに加えて、顧客の先進性や品質へのこだわり、イノベーションに対する期待など、日本市場の重要性が本社のボードメンバーにも理解された結果、新たな投資がなされたのだ」と強調する。日本DCによって顧客は大規模な基幹系システムのクラウド基盤を今まで以上に短期間かつ低コストで、容易に導入できるようになるのだとしている。
現在、SAPのクラウドサービスは、全世界で約3500万ユーザーを抱える。日本でも昨年に「クラウドファースト事業部」を新設するなどして売り上げを伸ばしているものの、ビジネス全体に占める割合はまだ高いとはいえない。「日本DCによってクラウド事業を大きく成長させていく」と安斎氏は意気込んだ。
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