著者紹介:宮田健(みやた・たけし)
元@ITの編集者としてセキュリティ分野を担当。現在はフリーライターとして、ITやエンターテインメント情報を追いかけている。アイティメディアのONETOPIでは「ディズニー」や「博物館/美術館」などのキュレーターをこなしつつ、自分の生活を変える新しいデジタルガジェットを求め日々試行錯誤中。
3Dプリンターが身近なものになりました。例えば、ものづくりメディア「MONOist」が実施していた3Dモデリングコンテストでは、3Dプリンターでどんな楽しいものが作れるのかをテーマに、さまざまな作品が集まりました。
審査員を務めた安斎肇さんや明和電機さんは、どの作品を選んだのでしょうか? ここでは1つ、実用部門のグランプリに輝いた「判緒(はんお)」という作品を紹介します。これは、へその緒のようにくねくねと歪んだ棒状のハンコで、ノコギリでどこを切っても同じ印影が出てくるというアイテム。3Dプリンターならではのアイデアですね。
ところで、3Dプリンターとハンコの組み合わせといえば、印影からハンコそのものを「複製」できる問題が頭をよぎりました。さすがに一般ユーザーが購入できるレベルの3Dプリンターでは精度が足りないようですが、技術の進歩とともに誰でも簡単にハンコの複製ができるようになるかもしれません。
3Dプリンターが「半径300メートル」に来る日も近い
しかしながら、3Dプリンターの可能性は大きいもの。実験室や製造現場という枠組みを超えて、エンターテインメントにも変化をもたらしそうです。
例えば、ディズニーは3Dプリンターと3Dスキャナーを使って、あなたをスター・ウォーズの世界に”閉じ込めてくれる”サービスを2012年に行っていました。劇中で、登場人物の1人であるハン・ソロが炭素冷凍されるシーンがありますが、それをまさにあなたの顔で再現するものでした。
また、子どもの顔をスキャンしてプリンセスのフィギュアを作るサービスも登場しています。いまの3Dプリンターでは、形を作ると同時に着色もできるということに驚きます。
博物館に収蔵してある貴重な資料も、3Dプリンターがあれば自宅で楽しめるようになるかもしれません。米ワシントンD.C.にあるスミソニアン博物館では、恐竜の骨やリンカーンのデスマスクなどの3Dモデルデータを積極的に公開しています。
この連載のタイトルは、“身近なIT”といえば「半径300メートル」以内くらいかなという意味を込めて名付けました。その視点でいえば、3Dプリンターは「まだまだ3キロくらい先だろう」と思っていたのですが、グッと距離が縮まっているようです。アイデア次第で、文字通り「いろんなモノ」が作れる3Dプリンター、あなたは何を出力したいですか?
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