「打たれ弱い」「ハングリー精神がない」「競争心に欠ける」——。そんなイメージで語られがちな平成生まれの若手社員を夢中にさせる、新人研修プログラムがあるのをご存じだろうか。
彼らを引きつけたのは、スマートフォンを使ってゲーム感覚で新社会人に必要な知識を身につけられる「モバイルナレッジ」。教材はアプリで提供され、内定者はちょっとした空き時間を生かして学ぶことができる。
まだ入社すらしていない内定者が、なぜ、お堅い教育コンテンツに夢中になるのか。
それは、この教材に“ゲーム性”があり、学んでいるうちに同期との競争心に火がつくからだ。この研修プログラムでは、研修コンテンツをこなせばこなすほどランクが上がり、ステータスや学習の進ちょくは、他の内定者や人事担当から見えるようになっている。ソーシャルゲームに慣れたスマホ世代にとって、これはまさに“ゲーム感覚”。学習コンテンツも1問あたりのボリュームが少なく、ほとんどが回答しやすい四択のクイズ形式でつくられている。ちょっとしたすきま時間にスマホでサクサクと学べるため、思わず夢中になってしまうというわけだ。
そんな新人教育プログラムをいち早く取り入れたのが、オフィスや店舗物件の仲介を行う不動産ベンチャーの「イデアル」。新卒内定者と指導役の先輩社員にモバイルナレッジを使わせている。
スマホを使った研修プログラムは、新人教育をどう変えるのか——。同社代表取締役社長の薄葉直也氏と、新人教育を担当する中野優氏、長林豪氏、幕田敬介氏、そしてこの4月に入社予定の島内玲奈氏、寺田拓真氏に聞いた。(以下、敬称略)
導入の決め手は“スマホでゲーム感覚”
——これまで、入社式の後に2日程度で行っていた研修をモバイルナレッジに変更した理由は?
薄葉: 「学ぶべきところは現場」という考えなので、私自身、長い時間拘束されるような学習方法が好きではないんですね。だから新入社員に対しても、そのような形の研修をしてこなかったんです。
ただ、研修で学ぶような知識は、きちんと身につければ武器になることも分かっていて。アプリをちょっと触ってみたら、ゲーム感覚で面白いし、ある程度の知識もつくので「ありだな」と思ったのです。
導入の決め手は、若い人たちが慣れ親しんでいるスマホで学習できる、という点につきます。もし、これが、PCを使った個人学習だったら導入しなかったでしょう。
——導入してみてどうでしたか?
薄葉: 新卒も先輩社員も、操作はすぐに覚えたようです。彼らの持つ知識欲とゲーム性がマッチしたようで、自発的に繰り返し学習していますね。
例えば、学校では教わらない社会人としてのマナーや決算の知識などは、お金をかけて講師を呼んで集中セミナーを行っても、受講者はその場限りで忘れてしまいます。正直なところ、モバイルナレッジは1人当たりの費用が安いので(1万2000円/人)、過度な期待もないんですよ。1万円前後で基礎知識がついて面白くて、意欲的に学んでくれるなら、講師を呼んで研修するよりもいいのではないかと思ったのです。
あと、この手の話は教科書みたいに書いてあったら絶対に読まない(笑)。クイズになっているからやるんです。
「必要なことを教えるのに注力できる」——教育担当の声
——新人教育担当の皆さんにもお伺いします。「モバイルナレッジ」のメリットは何でしょうか?
中野: 営業は現場に出ないと分からないことがたくさんあります。そのため、これまで新人教育は、ほとんど現場中心で行ってきました。でも、もっと基礎的なこと、例えばビジネスパーソンとしての礼儀や一般的な社会人としてのマナーなどを教えている暇がありませんでした。
幕田: 最初の数カ月は、「新人」というだけで、取引先からかわいがってもらえますが、徐々に社会人として欠けているところがみえてきます。入社前から系統立てて基礎的なことを学んでおいてくれるのは、非常に助かります。
中野: 「現場で必要なこと」を教えるのに注力できますしね。
——新人を教育する立場の皆さんもモバイルナレッジを使っているそうですね。実際に学習して、発見はありましたか?
長林: コミュニケーション機能があるのはいいですね。誰かが、ある問題に「いいね」をしているのを見ると、「あ、自分も見てみよう」と思います。
中野: このアプリには、問題を解いた回数に応じて上下するランキング機能があります。私たちは営業という職業柄、「トップになりたい!」とムキになって取り組むので、こういう学習方法は向いていますね。
中野: ビジネスマナーは、新たな発見もありましたね。例えば、「見晴らしの良い窓がある場合、上座の位置が変わる」というのは知りませんでした。
長林: あれは新発見でしたよね。
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