2014年のCP+で一番話題を呼んだといっても過言ではないような気がする1台のカメラがある。シグマの「SIGMA dp2 Quattro」(クアトロ)である。
クアトロというと思い浮かぶのは人によってスージー・クアトロだったりアウディのクアトロだったり渋谷のクラブ・クアトロだったり、クアトロ・バジーナだったりとそれぞれだけれども、そもそもイタリア・スペイン・ポルトガル語といったラテン語系の言語で「4」を表す言葉。
初期のDPシリーズ(sやxを含む)、新しいメリルセンサーを搭載したDP Merrillシリーズに次ぐ3代目 dpシリーズがQuattro。3代目なのにQuattroなのは、イメージセンサーが新たな3層構造 1:1:4を採用したのにちなんだからだ。
dp2 Quattroは見た目の斬新さでも話題になったけれども、同時にイメージセンサーも新世代に突入していて、それがかなりユニークな構造となっているのである。あまりにユニークなアイディアなので、ほんとにこれでいけるのか、いったいどこからこんな発想が出てきたのか。
直接シグマで聞いた方がいいということで、出かけてきた。訪ねたのは、同社マーケティング部の桑山輝明氏だ。
「Foveon X3 センサー」とはそもそも何か
荻窪: ところで、クアトロセンサーって正式にはなんて呼べばいいのでしょう? クアトロセンサーだとどんなセンサーなのかピンとこないですよね?
桑山氏: 正式には「Foveon X3(フォビオンエックススリー)センサー クアトロ」と呼びます。クアトロはセンサーのジェネレーションネームです。通称クアトロセンサーと呼んでいます
荻窪: 今回はそのクアトロセンサーの話を伺いに来たのですが、dp2 Quattroのユニークなデザインで新たにSIGMA dpシリーズへ興味を持った人は確実にいますから、まず根本的なFoveonの話からしていただこうかと思います。我々はFoveonというと三層構造のセンサーということは知ってますが、まだ知らない人もいっぱいいると思いますから。
桑山氏: そうですね。まずは、Foveonの特徴である三層構造についてお話したいと思います。
荻窪: まず一般的なイメージセンサーとの違いはどこにあるのでしょう。
桑山氏: Foveon以外の一般的なイメージセンサーは光の強弱しか感知しないモノクロのセンサーです。そこで、カラー情報を得る為にひとつひとつの画素にRGBのいずれかのフィルターを載せて単色の色情報を得ています。
例えば1000万画素センサーの場合、G(グリーン)が500万画素、R(レッド)とB(ブルー)が250万画素ずつ取り込んでいます。Gが2倍になっているのは人間の目がグリーンに一番感度を持っているからです。その特性を利用して、より高い解像力を得ようとしています。
荻窪: それだと各画素は1色分のデータしかとれませんから、単純に考えると1000万画素のカラー写真は作れませんよね?
桑山氏: そうなんです。ですから隣り合ったピクセルの色情報を参考にして、そこにあるべき色を補完するという作業をそれぞれ行って、1000万画素のカラー画像を求めています。実際にキャプチャーした色はGBRそれぞれ500万、250万、250万で、それ以外の色は計算して求めているわけです
荻窪: いよいよ本題に近づくわけです。それに対してFoveonはどのように色をキャプチャーしているのでしょうか。
桑山氏: Foveonセンサーは三層で色を取り込んでいます。ですから、1000万画素の画像を作るのに、RGBそれぞれ1000万画素ずつキャプチャーしています。
荻窪: この図を見ると、Bの層、Gの層、Rの層と3つの層に分かれています。このようにうまく光が透けてくれるんでしょうか?
桑山氏: シリコンは、表面から順に短い波長(B)の光を吸収して、深くなるほど長い波長(R)を吸収する特性を持っています。このシリコンの特性を利用して、各フォトダイオードごとに、表面近くからB-G-Rの順に光を取り込んでいるのです。
荻窪: ああ、だから、三層の順番がそうなってるのですね。個人的にDP1メリルを持っているのですが、他のどのカメラより解像感が高いと同時に、発色が印象的です。一見、特に色が豊かということはないのですが、RAW現像の際、色を大きくいじって彩度を上げても絵が破綻しないですね。他のカメラだと色をいじりすぎると部分的に色が破綻しはじめるのですが、Foveonセンサーはそれがない。これはすごいなといつも思います。
桑山氏: それは、すべての色情報を取り込んでいる為に色分解能が高いのがその理由です。カメラ内のJPEGも良いと思いますが、ぜひ後から画の調整が可能なRAWで撮ってもらいたいと思っています。
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