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「mixiの次となる本流を作りたい」――ミクシィが仕掛ける“脱力”メッセージアプリ「muuk」の設計思想

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 「mixi」をリリースして10周年という節目の年となる3月3日、自撮り写真を送りあうスマートフォン向けメッセージアプリ「muuk」をリリースしたミクシィ。10代〜20代前半の女性をメインターゲットとするmuukは、同日中に1万ダウンロードを突破する好調な滑り出しを見せている。

 本アプリはメインカメラとインカメラで同時撮影した写真を友達同士で送り合うというもので、写真は閲覧開始から3秒後には消えてしまいデータも残らないという特徴がある。さまざまなSNSが乱立する昨今において、なぜそのような仕様のサービスを開発・提供するに至ったのか。ミクシィ取締役最高事業責任者の川崎裕一氏と、muukの開発担当者である大崎敦士氏に話を聞いた。

それでもやっぱり、SNSをやりたかった

 かつて国内で大きな存在感を放っていたSNS「mixi」を運営していたミクシィだが、最近はLINE、Facebook、Twitterなどの競合サービスに苦戦を強いられてきていた。さまざまなSNSが乱立する中、あえてメッセージアプリの「muuk」を世に出そうとした理由は何だったのだろうか。

photoミクシィ取締役最高事業責任者の川崎裕一氏

 「ミクシィにとって10周年となる節目となる年に、何か新しいサービスを作ろうと考えていました。SNSを長年運営してきた経験もあるので、新しい人間関係を前提にしたものを作りたかった。写真を前提として、日常の会話にフォーカスを当てたのがmuukです」と川崎氏は話す。

 「実は最初大崎に相談したときは、『SNSは絶対的に陳腐化する』と言われたんです。リアルの人間関係が数年単位で変化する中、長年同じSNSを使い続けることは難しいのだと。それでもSNSをやりますかと言われて、正直そのときは明確な答えはなかったんですけど、それでもやるんだと」(川崎氏)

 「これまでのSNSはテキストが主体だった」と前置きをおいた上で、川崎氏がmuukで提案するのは「写真+表情+テキストという新しいフォーマット」だ。その中で「シンプル・ミニマム・スピード」という3原則に基づき、「写真をどこよりも早く送れるメッセンジャー」を目指したと川崎氏は話す。その背景にある思想は「自然な会話に近づける」こと。大崎氏は「リアルな会話をネットの世界に置き換える場合、返信や送信をいかに簡単に早く送れるかということが重要になる」と説明する。

 メインカメラとインカメラで撮影者と被写体の写真を同時に撮影する特徴を持つmuukが意識するのは、「目線の交換と共有」(川崎氏)。「仮に僕があなたの前にいたらこんな表情をしています、というのを写真で送るというのが最初のイメージです」(大崎氏)。

 また、大崎氏は「仲のいい人同士だからこそ分かる、ハイコンテクストなものを送り合ってほしい。会話をしていても、リアクションって表情から始まるじゃないですか。そういう自然な会話に近づけたかったんです」と話す。

リリース後は“想定内”と“想定外”がありました

 川崎氏によると、muukをリリースしてから、狙い通りの使い方をして盛り上がるユーザーがいる一方で、そうじゃない使い方が主流になるなど、いくつか発見があったという。ユーザーの反応からどういった気付きを得たのだろうか。

photo「muuk」の開発担当者である大崎敦士氏

 「仲のいい友達同士で変顔を送ったりして盛り上がるというのは予想していました。想定外だったことは、インカメラで自分の顔を2枚撮って送る人が多かったことですね」(川崎氏)。これに関して、大崎氏は「最初は自分の顔を2枚送る意図が分からなかったのですが、自分の表情や状況をより相手に伝えやすくするという意味だと考えると納得がいきます」と語った。最初は実装すべきかどうか悩んでいたテキスト機能もユーザーによく使用されているという。

 ほかにも、起床後にベッドの中から友達にあいさつ代わりの顔写真を送る、失恋したときに泣き顔を送るなど、これまでのSNSにはない「新しい習慣」(川崎氏)が生まれているという。川崎氏と大崎氏は、「これまでならネットに上がることのなかった写真が共有されるようになること」にmuukの価値を見いだしている。

 また、「会う頻度の高いグループほど、サービスの利用が継続する傾向にある」と川崎氏は話す。1週間に1回しか会わない関係より、毎日会う女子高生や女子大生グループの方がサービスを利用する頻度も高く、muukが日常の会話を補完する役割を果たしているのがよく分かる。

素の自分をさらけ出せる“ゆるゆる”なサービスを

 最近よく聞く言葉に「SNS疲れ」というものがある。mixiの「あしあと」やLINEの「既読」など、相手が自分のメッセージを閲覧したかどうかを通知するような機能が原因で人間関係に疲れてしまうことを指す。そのような機能は「絶対実装しないと最初に決めていた」という川崎氏。その背景には、自身で「使命」と表現するような強い意志があった。

 「今は、人が常に緊張状態ですよね。会社で疲れて、帰りにおいしいものを食べたらそれをデリシャスモードで写真を撮って、家で自分撮りをしても美肌モードにしたりとか(笑)。それって疲れますし、人間はそんなにずっと気張っていられない。いわゆる“盛る”サービスはたくさんあるんですが、muukのような脱力した“ゆるゆる”なサービスは全然ないなと気付いたんです。そこにはある種の使命感のようなものがあります」(川崎氏)

 「肩肘張らない」という意味で、川崎氏は類似サービスとしてユーザーがスマホやPCを使ってライブ配信を行える「ツイキャス」を挙げる。素の自分をさらけ出せるサービスとしてmuukは写真主体のコミュニケーションを選択したが、動画という手段は考えなかったのだろうか。

 「動画はポテンシャルがあり、魅力的なのでもちろん考えました。しかし、なぜ動画を使うのか納得できるまで落とし込めなかったので実装はしていません。すごくやりたい分野ではあるので、今後に期待していただければ」(川崎氏)

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