ハーバード大、マサチューセッツ工科大(MIT)、スタンフォード大など世界トップレベルの大学のオリジナル講義をオンラインで無料受講——2012年に米国で始まった教育サービス、「MOOC」(Massive Open Online Course:大規模オープンオンライン講座)による高等教育の無料化が英語圏を中心に進んでいる。関心のある講義を選んで映像を視聴、テストやレポートに取り組むことで成績と修了証が発行される、一連の学習カリキュラムだ。
“資料公開”ではなく“教育サービス”
MOOCの最大の特徴は、単なる講義資料の公開ではなく、教育サービスとして成立している点だ。ネット普及に伴う「教育のオープン化」は10年以上にわたって取り組みが続いているが、これまでは「オープンコースウェア」として既存の大学講義の映像に加えシラバスやテストの公開程度にとどまるケースが多かった。外部から閲覧できるのはあくまで資料そのものであって、学習者をフォローする仕組みはなかった。
現在のMOOCサービスで主に提供されているのは、オンライン学習に最適化されたオリジナルコースだ。受講者は、大学の教授陣による10〜15分程度の動画を週に計1〜2時間分視聴し、関連した課題をこなす。1〜2カ月かけて決められたカリキュラムを学び、最終的に成績や修了証が付与される仕組みだ。優秀な成績を収めたモンゴルの高校生にMITへの入学許可が与えられたり、企業によっては修了証を転職の際の資格としてみなすなど、既存の教育やビジネスの現場に影響する事例も生まれている。
大学側・講師側は講義映像を録り下ろし、課題や試験問題を準備する必要があり、負担は小さくない。それでも「ネット時代の今、高等教育機関ができること」として、世界中に大学の知を無償で届ける取り組みに賛同し、続々と世界の一流大学が参画している。MOOCの最大プラットフォームの1つ「Coursera」は1月末時点で108大学の626コースを開設、世界640万人以上のユーザーを獲得している。世界銀行やニューヨーク近代美術館(MoMA)など大学以外も講座を持っており、新たな教育インフラとして存在感を高めている。
英語圏の大学が中心ということもあり、国内大学の動きはまだ小さい。東京大学大学院情報学環の山内祐平准教授は「2012年の“MOOC元年”以降、どの国際会議でも必ず話題にあがるホットな話題。日本の高等教育をグローバルにアピールするためにも、何らかの方策が必要な時期。今後他の大学の動きも活発になってくるだろう」と展開が速まることを示唆する。
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