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ビットコインの仕組みとMt.Goxの事件――仮想通貨に未来はあるか

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 2013年辺りから「ビットコイン」という言葉をよく耳にするようになった。仮想通貨という、電子マネーに似て非なるビットコインの価値は高騰し、わずか1カ月で5倍以上になった時期もある。

 すわ、今が買い時だ、乗り遅れるな、と沸いたのもつかの間、一般ニュースで大きく取り上げられたのは世界最大のビットコイン取引所「Mt.Gox」が顧客から預かったほぼすべてのビットコイン——一説によれば490億相当——を失った、という事件だった。

 その後、この問題はMt.Gox固有の問題である、とほかの取引所が共同声明を発表するも、立て続けに取引所の停止やサイバー攻撃が相次ぎ、さらには今までなぞとされたビットコインの提唱者である中本哲史氏が見つかったとされるなど、スキャンダラスなニュースがひっきりなしに続いている。

 あまりにも波乱に満ちた展開を見せているビットコインだが、ネットの反応に目を向けると「独自通貨なんだから円天と同じ」「最初に参加したやつが儲けるねずみ講」といったコメントが散見され、ビットコインそのものすべてが信用できない、という見方をしているネットユーザは少なくない。

 はたしてビットコインとはそういうものなのだろうか。また、Mt.Goxが主張するように「盗み出す」ことは本当にできるのだろうか。そういった疑問を一般社団法人日本デジタルマネー協会フェローの大石哲之氏に伺った。本稿は氏の解説・意見をもとに筆者の観点から解説を試みたものになる。

og_bitcoin_001.jpgog_bitcoin_002.jpg大石哲之氏が主宰する「ノマド研究所」(http://nomad-ken.com/)と日本デジタルマネー協会(http://www.digitalmoney.or.jp/)のWebサイト

中央機関がないのに信頼できる理由とは

 ビットコインの最大の特徴は中央機関がないことだ。そしてそのことがさまざまな誤解を引き起こしている原因かもしれない。例えば、日本円の流通に関与する公的と目される機関はいくつかある。紙幣を発行する日本銀行、預金や為替取引を行う普通銀行などだ。それがビットコインだとどうやって実現されているのだろうか。

 千円札や一万円札は日本銀行券と記載されているとおり、唯一、日本銀行だけが発行している。ほかのところが発行したらそれは偽札だ。そのために偽造防止技術をふんだんにつぎ込み、偽造に対しては厳しく罰則を定めている。紙幣に使われる「黒透かし」を使った紙を製造するだけでも政府の許可が必要となるくらいだ。

 一方、中央機関のないビットコインでは、コインの発行も各参加者自身が行う。もちろん、紙に自分で紙幣の絵を描いてそれをお金だと言い張るような一人よがりなものではない。

 ビットコインの発行には「採掘」(マイニング)という言葉が使われるため、あたかも無からコインを掘り出すかのような印象があるが、これは半分正しくて半分正しくない。何かを必死に計算し、あるものを見つけたらビットコインが手に入る、という部分は正しい。だが、それは黙々と埋蔵金を掘り起こすように行うものではない。強いて言えば、「業務に対する報酬」としてもらうものだ。

 その業務とは、送金に対して「承認」することである。

 結局のところ、通貨の流通システムというのは、ある財布から別の財布にお金を移動させること、と単純化することができる。それが信頼に足るためには送金元の財布の持ち主しか送金ができない、送金元から減った分、送金先に増えるといったことが必要だ。硬貨や紙幣の場合は物理的に移動するため確実だが、銀行口座からの振込みでも同じことが求められる。公正であること、矛盾が生じないことは絶対不可欠な条件だろう。

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